助成先|令和5年度(2023年度)助成先

事業概要

緑による都市環境の改善に資する調査研究のため支援を希望する者に対し、当該調査研究活動に係る費用を助成しています。本事業は、技術開発基金の運用から生じた果実をもとに実施しています。

実施状況

平成5年度から開始された本事業は、令和4年度までに計104件の助成を行いました。

令和5年度(2023年度)助成対象者

令和5年度の調査研究活動の助成対象者は、都市緑化機構内に設置した選考審査会によって、応募された調査研究課題の都市緑化技術としての適確性、独自性、内容、方法の適切さ、成果の有効性等について評価がなされ、その結果、以下の4名の方と決定いたしました。

申請者/所属 研究テーマ・内容

伊藤 温

東北大学工学部4年

「形態の異なる街区における街路樹による歩行者空間の暑さ対策効果の定量化」
都市空間の有効な暑さ対策の一つとして街路樹の設置が挙げられる。多くの既往研究では、ある特定の街区を対象とする実測調査や数値解析結果に基づいて、街路樹の暑さ対策効果が評価されている。しかしながら、その対策効果は、対策を施す街区によって異なると考えられる。例えば、建物群の形態(建物高さ・建蔽率等)が異なると、歩行空間に差し込む日射量や風通しが変化し、樹木による日射遮蔽効果や、光合成に伴う蒸散効果が変化する。本研究では、まず街区形態の類型化を行う。その上で、各類型の街区に街路樹を導入する条件で対流・放射連成解析を実施し、この結果に基づいて、街区によって異なる街路樹の暑さ対策効果を定量化する。

小切 壮仁

神戸大学大学院

博士課程前期2年

「緑化木における通水阻害の新しい定量評価手法の開発」

都市部に生育する緑化木は日中の乾燥ストレスに晒されている。これにより樹体内では通水組織の内部に気泡が生じて樹液の上昇が妨げられる現象【通水阻害】が日常的に生じている。通水阻害で樹液流量が低下すると、植物ホルモンや栄養塩の輸送機能が低下、すなわち樹勢の低下に繋がるため、緑化木を管理する上で通水阻害の効果的な非破壊計測手法が求められる。そこで本研究では、緑化木の樹体内の通水阻害を簡易かつ非破壊的に定量化できる新しい計測手法を提案することを目的とする。

出牛 すずか

東北大学大学院

博士課程前期1年

「街路樹の形状・葉の密度・配置間隔が歩行者空間の温熱快適性に及ぼす影響の分析」

街路樹は風速の低減、日射の遮蔽、蒸散などにより周囲の温熱環境に多様な影響を及ぼすが、これらの影響は樹木の樹冠形状、配置間隔や葉面積密度等によって大きく異なる。申請者らはこのような樹木が周囲に与える影響のうち、蒸散による気化冷却と葉表面の熱収支変化の効果に着目し、実大の樹木の蒸散量と、蒸散に伴う熱収支の変化により決まる葉温を予測するモデルを改良・整備してきた。本研究ではこの蒸散モデルを組み込んだ数値解析により、樹冠形状、配置間隔や葉面積密度を系統的に変化させたケーススタディを行い、樹木蒸散量、及び形成される歩行者空間の温熱環境を定量評価することで、樹木の形態による影響を明らかにする。

YANG ZIZHEN

横浜国立大学大学院

博士課程前期2年

「港北ニュータウンにおける斜面緑地の冷気のにじみ出し現象に関する調査」

本研究では、横浜市北部にある港北ニュータウン(グリーンマトリックスシステム)を対象とし、斜面緑地からの冷気のにじみ出し現象に着目し、ヒートアイランド軽減および建築の省エネルギー効果を検証する。まず、文献調査に基づき冷気のにじみ出しが発生する条件をまとめ、対象地の斜面緑地の地形特徴を分析・類型化し、にじみ出し現象が周辺の住宅地に効果を及ぼす可能性のある場所を抽出する。選定された斜面緑地(公園)とその周辺において温湿度を実測し、実測データを用いて公園からの冷気流移動や温度差変化をシミュレーションする。さらに、周辺住民へのアンケート・インタビュー調査も実施し、住宅の省エネ効果を定量評価する。

(順不同)