助成先|平成27年度(2015年度)助成先

事業概要

緑による都市環境の改善に資する調査研究のため支援を希望する者に対し、当該調査研究活動に係る費用を助成しています。本事業は、技術開発基金の運用から生じた果実をもとに実施しています。

実施状況

平成4年度から開始された本事業は、平成26年度までに計68件の助成を行いました。

平成27年度(2015年度)助成対象者

平成27年度の調査研究活動の助成対象者は、都市緑化機構内に設置した選考委員会によって、応募された調査研究課題の都市緑化技術としての適確性、独自性、内容、方法の適切さ、成果の有効性等について評価がなされ、その結果、以下の5名の方と決定いたしました。各々の研究の目的・概要は以下のとおりです。

申請者/所属 研究テーマ・内容
安藤 智也
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科博士前期課程1年
「エネルギー収支の観測に基づく都市緑地がもたらす気象緩和機能の定量化」
都市域における熱・エネルギー収支を解明することは、都市ヒートアイランド現象の詳細なプロセスの解明につながる。森林などの自然生態系と比べて、都市域における熱・エネルギー収支の連続観測は世界でも少なく、都市化に伴う諸熱環境の悪化や都市緑地の緩和機能を観測データから定量的に評価した研究は申請者が知る限る存在しない。本研究では都市中心部と都市内の大規模緑地の2つのエリアにおいてエネルギー収支を連続観測し、エネルギーや一般気象の日変化、季節変化から緑地が有する諸熱環境の緩和機能を個別のプロセスに分けて定量化する。
江部 杏奈
東京農工大学大学院農学府修士課程1年
「東京五輪選手村の熱的快適性と省エネの両立を実現する緑化計画および建物配置に関する研究」
2020年東京五輪選手村にとって最適な緑化技術とは。中央区晴海に建設予定の選手村では、特に夏季における過酷な温熱環境が強く懸念される。このため、選手及び居住者にとって最適な生活空間形成の実現が高く望まれる。本研究では、省エネルギー都市を実現するための効果的な緑化技術のあり方の検討を目的とし、1)ヒートアイランド緩和策として有効な建物配置と緑化手法(壁面・街路樹・屋上)のあり方、2)人工排熱が選手村空間の気温特性に与える影響を定量的に分析する。以上より、選手村に滞在・居住する人間にとって熱的に快適でありかつ省エネルギー基準に適合した都市空間形成に向けての具体的提案を数値実験技術の高度利用によって行う。
松宮 綾香
東京都市大学大学院修士課程1年
「日本型生物多様性バンキング“里山バンキング”対象地のHEPを用いた計画デザイン手法に関する研究」
開発によって消失する自然を復元することで代償する生物多様性オフセットは少なくとも世界53ヶ国で制度化されており、日本でも環境省がワークショップを開催し、昨年度に生物多様性オフセットの実施に向けて(案)が発表され、注目を集めている。しかし、今日本では復元・創造活動を行う計画策定時定量的な目標設定が行われていないものが多く、何をもって成功と言えるのか、根源的問題に直面している。本研究では、生物多様性オフセットの経済的手法である生物多様性バンキングを日本の都市近郊の緑地である里山を対象とし運営するには、どのような計画デザインであれば実現可能であるか、計画デザインプロセスの開発を目的とする。
山口 翔平
横浜国立大学大学院・博士課程前期2年
「窓面緑化が執務者の不快グレアに及ぼす影響」
窓面緑化は近年建築空間に積極的に取り入れられており、既往研究では執務者にくつろぎ感を与えることが明らかにされている。一方で、窓面はモニター視作業中に昼光による不快グレア発生させる恐れがある。そこで窓面緑化には単純に遮蔽物として物理的に輝度を低下させる以上に、心理的に不快グレアを緩和させる効果が期待される。
本研究では窓面緑化による視環境としてのプラスの効果を踏まえた上で、光環境の物理量測定や被験者によるグレア感の評価実験を通して、緑化窓面の印象を構成する光色に関わる要因の把握や心理的なグレア感軽減効果の検証を行い、室内執務空間設計に役立つ知識を得ることを目的とする。
吉川 龍之介
室蘭工業大学大学院工学研究科博士前期課程2年
「住民の評価構造に基づく「緑のリサイクル」に着目した低炭素・循環型の都市環境整備に関する研究」
本研究では、都市(大規模都市公園とその周辺)を対象として,循環型に資する「緑のリサイクル」等のバイオマスの利活用による低炭素化への影響と、住民の低炭素化への評価構造を解明し、低炭素・循環型の都市環境整備の方向性について検討することを目的とする。
具体的には、都市における炭素循環を定量的に評価し、住民の低炭素化への評価構造を解明しながら環境面・利用面のバランスを考慮した都市環境整備の方向性について検討する。そこで、低炭素化のシナリオを複数設定し、炭素循環を評価しながら、住民に対し低炭素化に対するアンケートを実施し、それらの評価構造を探ることで低炭素・循環型の都市形成に資する環境整備の検討を行う。

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