助成先|令和3年度(2021年度)助成先

事業概要

緑による都市環境の改善に資する調査研究のため支援を希望する者に対し、当該調査研究活動に係る費用を助成しています。本事業は、技術開発基金の運用から生じた果実をもとに実施しています。

実施状況

平成4年度から開始された本事業は、令和2年度までに計97件の助成を行いました。

令和3年度(2021年度)助成対象者

令和3年度の調査研究活動の助成対象者は、都市緑化機構内に設置した選考委員会によって、応募された調査研究課題の都市緑化技術としての適確性、独自性、内容、方法の適切さ、成果の有効性等について評価がなされ、その結果、以下の5名の方と決定いたしました。

申請者/所属 研究テーマ・内容

江口 亜維子

千葉大学大学院

博士研究員

「高経年住宅団地の屋外空間を活用したエディブル・ランドスケープの形成と居住者のwell-beingの向上に関する実践研究」
高経年住宅団地の屋外空間は、豊かな緑空間に成熟し、重要な地域資産である。しかし、近年は団地居住者の高齢化が顕著で、プレイロットが中心の屋外空間と居住者の利用に乖離が生じている。一方、コロナ禍において、感染症対策による交流機会の喪失から、高齢者の健康リスクが指摘される。そこで、社会的距離を保ちながら交流ができる場として団地屋外空間に着目した。
本研究では、団地屋外空間を活用し、コミュニケーションを促し、強いコミュニティ形成に寄与するエディブル・ランドスケープの実践研究を行う。食と緑に関連する取り組みを介し、多世代・多文化交流を促し、居住者のwell-being向上に寄与する屋外空間のあり方を検討する。

王 聞 
京都大学大学院

博士課程3年

「京都市の生産緑地における生態系サービスの評価と定量化」
生産緑地は都市域の緑地として公益的機能を発揮し、良好的な都市環境を提供する。京都市では農家の高齢化や専業農家の減少が進んでおり、生産緑地指定区域の更新時期が迫る中で、今後の都市農業を継承するために生産緑地の再評価が必要である。生産緑地の課題や生態系サービス(供給サービス、調整サービス、文化的サービス)の特徴は、地域性や産業構造、文化的背景等の違いにより異なっている。本研究では、京都市生産緑地の生態系サービスの定量化と総合的評価によって、市内の生産緑地の類型化を試みる。また類型ごとに適正な保全・利用方法の提案に資する資料とすることを目的とする。

河野 遼人

香川大学

4年

「プランターを用いた屋上緑化における導入植物の植被率ならびに成長に影響する環境要因の推定」
市街地において屋上緑化は暑熱緩和を目的として広く実施されており、建築物の積載荷重制限および維持管理にかかる金銭・労力コストなどの解決に向けた研究開発が行われている。
こうして提案された工法の一つであるプランターによる屋上緑化は、通常の屋上緑化と比較して緑陰面積あたりの導入土壌量が少量で済む一方、土壌の乾燥リスクが高まるデメリットが考えられる。本研究では、温暖少雨で乾燥リスクの高い瀬戸内地域において酷暑を避けた秋季の植栽を試み、導入植物の植被率、土中温度ならびに水分の継続的な測定を行うことで、プランターを用いた屋上植栽における導入植物の活力度・成長と土壌温度・水分などの環境要因との関連を検討する。

田代 藍

徳島大学

医歯薬学研究部

助教

「水都における生態系インフラが地域住民の健康に与える価値評価」
本研究は、生態系に立脚した防災減災の機能を持つ生態系インフラが、地域住民の心身の健康に与える価値を経済的価値として統合的に評価することを目的とする。先行研究では、欧米を中心に日常的に緑豊かな自然と触れ合ったり、水辺の近くに暮らしたりすることが、メンタルヘルスや身体活動に寄与することが多数報告されている一方で、アジアでのエビデンスは少なく、水環境の災害のリスク
は考慮されていない。そこで本研究では、単なる水辺の自然環境ではなく、防災減災機能が備わる水都の生態系インフラ(Eco-DRR)が、人の健康に与える価値を国内の水害の文脈で検証、さらに健康への経済的価値として評価し、生態系インフラの社会実装化の普及を目指す。

劉 山

筑波大学大学院

博士前期課程1年

「芝生地のグリーンインフラ効果に関する研究-雨水管理に着目した数量的評価-」
芝生は都市景観の最も強力なシンボルの 1 つであり、修景効果やレクリエーションの場の提供などに寄与してきた。一方、都市型水害が増加する中で、グリーンインフラとしての防災減災機能が注目されている。グリーンインフラとは、自然環境や多様な生き物が齎す資源や仕組みを賢く利用するという考え方で、自然が持つ多様な機能を活用して環境問題を解決する手段である。

本研究は、芝生地の施設ごとの維持管理の違いや、雨水の浸透率の違いを明らかにするとともに、芝生地が有する雨水調整機能の総量を解明することで、芝生地を有することで得ているグリーンインフラ効果を数量的に明らかにすることを目的とする。

(順不同)