助成先|令和7年度(2025年度)助成先

事業概要

緑による都市環境の改善に資する調査研究のため支援を希望する者に対し、当該調査研究活動に係る費用を助成しています。本事業は、技術開発基金の運用から生じた果実をもとに実施しています。

実施状況

平成5年度から開始された本事業は、令和6年度までに計116件の助成を行いました。

令和7年度(2025年度)助成対象者

令和7年度の調査研究活動の助成対象者は、都市緑化機構内に設置した選考審査会によって、応募された調査研究課題の都市緑化技術としての適確性、独自性、内容、方法の適切さ、成果の有効性等について評価がなされ、その結果、以下の3名の方と決定いたしました。

申請者/所属 研究テーマ・内容

西山 陽歌

東北大学大学院

博士課程後期1年

「単木樹木の炭素固定効果の定量化のための配置間隔、樹冠形状、葉面積密度の影響に関するスタディ

街路樹等の都市樹木に期待される効果の一つに、光合成に伴うCO2吸収(炭素固定)効果が挙げられる。樹木の炭素固定量は樹冠への日の当たり方や、気流抵抗・蒸散の影響よって変化する空気湿度の値や分布等により変化すると考えられる。これらの物理環境条件は、樹木の配置間隔や樹冠形状、葉面積密度
等により決まるが、炭素固定量と樹木配置や形態の関係についての十分な分析や、炭素固定量の定量評価は未だ行われていない。本研究では放射・流体連成解析に基づく、樹木の配置間隔、樹冠形状や葉面積密度を系統的に変化させたケーススタディを行うことで、樹木の配置や形態が樹木の炭素固定量に及ぼす影響を定量的に明らかにすることを目的にする。

藤井 芹奈

兵庫県立大学大学院 専門職学位課程 2年

「通勤経路中の都市公園の景観は労働者にリカバリー経験をもたらすか」

0次予防の推進(厚生労働省、2023)や労働者のストレスチェック制度義務化の拡大(厚生労働省、2024)を受け、通勤環境が労働者の精神的健康に及ぼす影響を検討する。近年、働きがいの指標として注目されるワークエンゲイジメントは、リカバリー経験との関係が認められており、仕事中のストレスや疲労を回復させる経験は、仕事に対する活力を向上させる可能性がある。そこで、本研究では、通勤経路に含まれる緑の景観がリカバリー経験をもたらすと想定し、ヒアリング及びアンケート調査、通勤環境内の都市公園の物理的要素と気分状態の関係解析を通じて、通勤経路にある都市公園の緑の景観がストレス緩和に及ぼす影響を明らかにする。

梅田 兼嗣

九州大学

博士前期課程1年

「ガーデンツーリズム登録制度が地域住民及び観光客にもたらす効果に関する研究」

近年、複数の公民管理の公園緑地や庭園等が連携し、魅力的な体験や交流を創出する取組として、ガーデンツーリズム登録制度(庭園間交流連携促進計画登録制度)が注目されている。2025年4月までに19計画が登録されており、集客や収益の増加、管理や事業を通じた連携の強化などが報告されている。しかし、地域住民や観光客など緑地空間を訪問・利用する視点から、登録ガーデンの相互連携によるアクセス性の向上や、事業連携による魅力の向上などを分析した研究はない。本研究では、ガーデンツーリズム登録制度を通じた、緑化による恩恵を享受する地域住民の生活の質の向上と、観光客の魅力向上という2つの効果を定量的に評価することを目的とする。

(順不同)