第19回 屋上・壁面緑化技術コンクール

第19回 日本経済新聞社賞:壁面・特殊緑化部門 (東京都中央区)
安田不動産株式会社
株式会社 松田平田設計
UDS株式会社
the range design INC.
AOYAMA NOMURA DESIGN + 株式会社乃村工藝社
SOLSO
株式会社イケガミ
HAMACHO HOTEL&APARTMENTS
安田不動産株式会社 株式会社 松田平田設計 UDS株式会社 the range design INC. AOYAMA NOMURA DESIGN + 株式会社乃村工藝社 SOLSO 株式会社イケガミ HAMACHO HOTEL&APARTMENTS01 全景 ©㈱ナカサアンドパートナーズ
全景 ©㈱ナカサアンドパートナーズ
安田不動産株式会社 株式会社 松田平田設計 UDS株式会社 the range design INC. AOYAMA NOMURA DESIGN + 株式会社乃村工藝社 SOLSO 株式会社イケガミ HAMACHO HOTEL&APARTMENTS02 西側立面図
西側立面図
 

 本作品は、ホテルと賃貸住宅の複合施設の緑化である。日本橋浜町エリア全域に安田不動産が展開する開発【『緑』と『手しごと』の見える街】のシンボルとして計画した建築であり、宿泊・居住機能に加え、レストラン・ギャラリー・ショップなど、国内外からのゲストによる新しい文化・コミュニティの創出を担い、地域の交流拠点となる施設である。
 最大の特徴は最大5mの高木を建物外壁に立体的に配置したバルコニー緑化である。豊かな緑と柔らかな木調化粧型枠コンクリートの外壁を組みあわせ、個性的で存在感がありながら柔らかい表情をもつ外観とした。バルコニーと地上部の緑化計画は多様な樹種・高さの植栽を組み合わせ、自然なままの植生の印象を与える植栽デザインとした。バルコニー緑化には、上階のホテル客室からの眺望に地上部のような豊かな緑を加え、驚きと同時に安らぎのある演出に寄与している。
 ニュー・ノーマル時代を迎え、積極的に多様な樹種・高さの植栽を導入し、宿泊客の心をゆったりさせる演出に挑戦した点が高く評価された。

■緑化技術の概要
HAMACHO HOTEL&APARTMENTSにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 地上部:129.53㎡
(バルコニー緑化は算定面積外)
設計上の荷重条件
実際の荷重
バルコニー:約600㎏/㎡
バルコニー:約580㎏/㎡(高木部分)
階数
土壌厚 バルコニー:600㎜ 土壌の種類と
名称
軽量特殊土壌
(アクアソイル)、ジャカゴ
土壌の湿
潤時比重
0.68
植栽数量 高木: 22本 中木: 32本 低木: 321本 地被: 47㎡
潅水方法 自動潅水システム
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.まちのシンボルとなる立体的な「緑」
安田不動産株式会社 株式会社 松田平田設計 UDS株式会社 the range design INC. AOYAMA NOMURA DESIGN + 株式会社乃村工藝社 SOLSO 株式会社イケガミ HAMACHO HOTEL&APARTMENTS
コーナーバルコニー緑化断面
安田不動産株式会社 株式会社 松田平田設計 UDS株式会社 the range design INC. AOYAMA NOMURA DESIGN + 株式会社乃村工藝社 SOLSO 株式会社イケガミ HAMACHO HOTEL&APARTMENTS
客室平面

 立体的緑豊かな都市景観の形成に貢献するため、最大3層分の高さを垂直に繋いだコーナー部高木は、バルコニーという限られたスペースで最大限の効果を生む緑化を実現している。


2.客室に温かみと広がりを与えるバルコニー緑化
安田不動産株式会社 株式会社 松田平田設計 UDS株式会社 the range design INC. AOYAMA NOMURA DESIGN + 株式会社乃村工藝社 SOLSO 株式会社イケガミ HAMACHO HOTEL&APARTMENTS
客室

 都心のホテルでありながら緑に囲まれた温かみのある客室空間を演出するとともに、視覚的な奥行きを作り出すことで広がりのある客室空間とした。また、バルコニーごとに異なる樹種を採用し、階や客室によって緑の見え方や変化する植栽計画としている。


3.ジャカゴの二重構造と特殊土壌による転倒防止対策
安田不動産株式会社 株式会社 松田平田設計 UDS株式会社 the range design INC. AOYAMA NOMURA DESIGN + 株式会社乃村工藝社 SOLSO 株式会社イケガミ HAMACHO HOTEL&APARTMENTS
バルコニー植栽の転倒防止対策

 5mの高木をバルコニーに設けるため、3つの転倒・転落防止対策を行った。


〇ジャカゴの二重構造による転倒防止対策
 躯体に固定したジャカゴ(アウターボックス)に、高木と一体化したジャカゴ(インナーボックス)を固定する二重構造とすることで、高木を建物にしっかりと固定している。


〇毛細根を成長させる軽量特殊土壌(アクアソイル)を用いた事前養生による転倒防止対策
 地上で高木を半年間事前養生することで、根(毛細根)を特殊土壌に定着させた。そして、特殊土壌を介してジャカゴと高木を一体化させ、取り付けもジャカゴごと楊重・設置することで、定着不足による根元からの転倒を防止する。


〇ワイヤーによる折れた枝の転落防止対策
 建物躯体と幹の上部をワイヤーで固定し、強風による倒木や枝の落下を防止する。