第18回 屋上・壁面緑化技術コンクール

第18回 日本経済新聞社賞:特定テーマ部門 (東京都調布市)
国立大学法人電気通信大学佐藤証研究室 UEC Hydroponic Farm
国立大学法人電気通信大学佐藤証研究室 UEC Hydroponic Farm01 全景
全景
国立大学法人電気通信大学佐藤証研究室 UEC Hydroponic Farm02
国立大学法人電気通信大学佐藤証研究室 UEC Hydroponic Farm03 平面図/立面図
平面図/立面図

 本作品は、屋上に設置した水耕栽培システムである。大学のある調布市は、1946年に世界初の水耕栽培による大規模植物工場『Hydroponic Farm(ハイドロポニックファーム)』が誕生した地として知られている(注:『Hydroponic』とは、土を使わずに、液肥だけで植物を育てる栽培方法)。
 作物の生産を目的とする従来農業とは異なり、農をエンターテイメントとして、土地の限られた都市に広げるための研究施設である。バーベキュー等のイベント、小中高生や海外からの学生への課外授業を行い、収穫した野菜は子ども食堂や地元レストランへ提供している。無農薬栽培を採用した本システムは、地元の小学校や病院をはじめとして、都内の複数の商業施設へも導入されている。
 防水、防根、耐荷重工事が不要であり、コミュニケーションを重視した楽しむ農業として、土地の限られた都市だけではなく、仮設住宅等、今後の設置場所への展開の可能性が高く評価された。

■緑化技術の概要
UEC Hydroponic Farmにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 50㎡50㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
50㎡
50㎡
階数 4階屋上
(屋上緑化のみ)
土壌厚 0㎜ 土壌の種類と
名称
なし 土壌の湿
潤時比重
0
植栽数量 果菜: 175株(12種類) ハーブ: 14株(1種類) 花草: 44株(2種類)
潅水方法 センサーによる自動循環および遠隔制御
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1. 
国立大学法人電気通信大学佐藤証研究室 UEC Hydroponic Farm
小型水耕栽培システムによるトマトの栽培

 本作品は、重い土を用いず、軽いパイプに水を循環させて、植物を栽培するため、防水、防根、耐荷重工事が不要で、水と電気(50~100W程度のソーラーパネルでも駆動可能)が確保されていれば一日で設置可能である。長いパイプを用いた据え置き型の他に、可搬性に富んだ高い高さ1mの小型システムも開発し、同施設に設置している。


2. 
国立大学法人電気通信大学佐藤証研究室 UEC Hydroponic Farm
水耕栽培装置のモニタ・制御画面

 温湿度、水温、水位、液肥濃度、日照等をリアルタイムで遠隔モニタして、異常を通知するシステムに加え、カメラを導入した動画解析やセンサーの種類を変えたシステムの養蜂への応用など、新たな研究にも取り組んでいる。IoTデバイスやマイコンの高性能化、小型化、低価格化により個人のベランダ等でも利用可能になった小型システムは、複数の利用者のフィードバックを受けながら製品化に向けた改良を続けるとともに、持続可能な社会の実現を見据えながら、農地や特別な設備を必要としない都市農業の提案と実践を進めている