第18回 屋上・壁面緑化技術コンクール
第18回 環境大臣賞:壁面・特殊緑化部門 (東京都荒川区) | |
株式会社トーケン 小松マテーレ株式会社 未来緑化株式会社 |
都電荒川線無灌水型軌道緑化(荒川車庫前停留場付近) |
本作品は、無灌水型軌道緑化である。日本国内の軌道緑化の多くは芝生緑化であるが、本作品では、都市緑化技術審査証明で有効性が認められた緑化システムを採用することで、無灌水対応を可能にするだけでなく、保守作業の軽減化と維持管理の簡略化を実現した。 |
■緑化技術の概要
都電荒川線無灌水型軌道緑化(荒川車庫前停留場付近)における技術的な諸元は以下のとおりである。作品面積 | 120㎡ | 設計上の荷重条件 実際の荷重 |
105㎏/㎡ (飽和状態、L字枠、下地 (クッション材含む) 105㎏/㎡ |
階数 | ─ |
---|---|---|---|---|---|
土壌厚 | 10~15㎜ | 土壌の種類と 名称 |
湿性多孔質人工土壌 「グリーンビズソイル」 |
土壌の湿 潤時比重 |
0.9 |
植栽数量 | 地被: 120㎡ | ||||
潅水方法 | 無灌水仕様(降雨のみ) |
1.採石上に直接設置、保線作業で移動が自在に対応可能
従来の工法は、砂利・土を敷いた上に火山灰混合ブロックを敷き並べ、そこに土を撒いて芝生を植付ける。一方、当該緑化システムでは、凹凸のある砕石上に、試行錯誤を繰り返して開発したクッション材を用いて不陸を調達することで、条件に応じた簡単で安定的な設置か可能となった。また、ずれ防止対策に不織布を使用し、保水セラミック基盤の簡易で安定した固定を実現するとともに、L型枠に設置した基盤をユニット化することで運搬だけではなく、設置・撤去・移動・再設置のいずれも臨機応変に行えるシステムとなっている。
2.無灌水対応と維持管理の軽減
本作品では、セダムによる無灌水型緑化システムを採用しており、建設技術審査証明で無灌水型緑化としての有効性が実証されている。混植・単植のセダム類、土壌、最大保水量は14ℓ/㎡の機能を有する保水層・排水層兼用の保水セラミックス基盤、これらを一体化した植栽ユニットを使用している。
3.周囲の環境改善とその後の展開
温度計測と生物モニタリング調査を行い、当該緑化システムが周囲に及ぼす環境改善の効果を検証した。
日較差が最も顕著となる猛暑(2017年7月)に温度計測を実施したところ、緑化部は非緑化部と比べて、冷却効果について明確な違いを示し、暑熱環境緩和の十分な効果が検証できた。
生物モニタリング調査では、非緑化部の砕石上では見られなかったモンシロチョウ、アオスジアゲハ、ヒラタアブなどの多種の生物が集まる状況が見受けられ、生物多様性の復元に有効な空間の予兆が示唆されている。
これらの結果を踏まえ、東京都交通局では、2018年から、都電荒川線の荒川車庫前・町屋駅前・大塚駅前付近の3箇所(合計約310㎡)で実証実験を行っている。