第18回 屋上・壁面緑化技術コンクール

第18回 国土交通大臣賞:屋上緑化部門 (東京都港区)
日鉄興和不動産株式会社
株式会社日本設計
株式会社大林組
株式会社日比谷アメニス
赤坂インターシティAIR
日鉄興和不動産株式会社 株式会社日本設計 株式会社大林組 株式会社日比谷アメニス 赤坂インターシティAIR01 全景
全景
日鉄興和不動産株式会社 株式会社日本設計 株式会社大林組 株式会社日比谷アメニス 赤坂インターシティAIR02 水景散策路(下)
水景散策路(下)
日鉄興和不動産株式会社 株式会社日本設計 株式会社大林組 株式会社日比谷アメニス 赤坂インターシティAIR03 平面図
平面図

 本作品は、東京赤坂の超高層複合ビルの緑化である。六本木通りに面した約16,000㎡の敷地内に、緑あふれる居心地の良い空間が広がることを第一の目標に掲げ、敷地の西側にオフィス、住宅、店舗等からなる高層棟を寄せ、東半分に緑地を配した。1階低層棟の上部も土で覆った大きなマウンド上の緑地である。当該敷地の一画には、人々が集い・憩う、にぎわいの場であった江戸の水源「溜池」が位置していた。そのような土地の価値の継承、再生を狙い、敷地内に水景を取り入れている。
 開発に期待をこめられた地権者、働き憩う人々のため、竣工時から圧倒的な緑量感の確保が課題とされていた。そこで、自然樹林の調和する姿に倣った木々を組み合わせる植栽手法、現状を維持管理するのではなく、自然に木々が成長し、風景が自然に変化することを許容する管理手法を試みている。その結果、完成から約2年が経過した現在、野鳥が訪れ、オフィスワーカーをはじめ周辺の人々の憩いの場として定着しつつある。
 基盤造成から植栽選定、灌水や維持管理に確実な技術を組み合わせて、都市の森を創出し、再開発エリアの価値を高めた点が高く評価された。

■緑化技術の概要
赤坂インターシティAIRにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 5,641㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
2,000㎏/㎡
1,990㎏/㎡
階数 1、2階屋上
土壌厚 300~2,500㎜ 土壌の種類と
名称
一般植栽用土 土壌の湿
潤時比重
1.3
植栽数量 高木: 252本 中木: 278本 低木: 10,026本 地被: 692㎡
潅水方法 原則として無潅水。一部、自動潅水。斜面地は、底面潅水。
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.植栽選定と維持管理
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 植栽手法には、調和のとれた自然樹林が生き生きと枝を張りながらも寄り添い、共存する姿に倣って木々の組み合わせを試みた。具体的には、片枝を伸ばして樹種本来の躍動的な枝姿に戻ろうとしている材料を選び、補うように組み合わせて配植することで群景としての調和と緑量の確保を図った。そして、植栽材料はすべて、その個性、特徴を採寸し、3Dソフト上で組み合わせて配植を決定し、現地の樹木立込みに設計者が立ち会い、隣り合う木々とのバランスを確認した。維持管理にも、設計者が立ち会い、将来像を想定しながら、バランスと密度を調整する枝抜き剪定を中心に、必要以上に手を加えない巡回型の管理を試みている。


2.植栽基盤の造成

 躯体上に高低差最大7mのマウンド状の緑地を整備するため、荷重負荷を減らし、土厚の極端な食い違いによる不等沈下を避けるため、EPSを階段状に敷設して土台とした。盛土は、自然土を十分に締め固めた一次造成の上に、自然土をベースとした植栽改良土を重ねて形成した。樹木の将来成長を前提として、地下支柱に頼らず、根系で自立できる基盤として、支持力のある自然土を採用している。


3.潅水
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潅水模式図

 原則として、自然降雨に頼る考え方を優先した。盛土斜面に水を供給することは、斜面の安定にとって不都合であり、自然土主体の土壌を採用したことで、植物は広く深く根を伸ばすため、自然降雨で自立することが期待できるからである。万が一、自動潅水の必要性が生じた場合には、必要最低限の工事で追加整備ができるよう、一次供給給水管、渡り配管までは全体的に整備している。
 土厚が薄いマウンド頂部は自動潅水とした。浸み込んだ水は土壌底面を浸透管に導かれ、階段状のEPSに沿って流下しながら、各段に設けた堰き止めによって地下水のように一時滞留させている。