第17回 屋上・壁面緑化技術コンクール
第17回 日本経済新聞社賞:壁面・特殊緑化部門 (東京都千代田区) | |
小学館不動産株式会社 株式会社日建設計 鹿島建設株式会社東京建築支店 西武造園株式会社 |
小学館ビル |
本作品は、東京を代表する「本の街」、神保町の白山通り沿いに立地する出版社の本社ビルの建替に伴う壁面緑化である。 |
■緑化技術の概要
小学館ビルにおける技術的な諸元は以下のとおりである。作品面積 | 1,532.860㎡ | 設計上の荷重条件 実際の荷重 |
100㎏/㎡ 50㎏/㎡ |
階数 | ─ |
---|---|---|---|---|---|
土壌厚 | 50㎜ | 土壌の種類と 名称 |
固化培土 エクセルソイル |
土壌の湿 潤時比重 |
0.9 |
植栽数量 | 高木: --本 中木: --本 低木: --本 地被: 1,532.86㎡(34,080苗) | ||||
潅水方法 | 警報機付点滴式自動灌水システム |
1.国内最高高層域の大規模壁面緑化による都市緑化機能
都市防災機能の増強などにより、大型化する屋上設備機械類を包み込む地上40m~51.3mの高さ、周囲65m×21mの屋上に約1,530㎡の高層大規模壁面緑化を設置し、遮蔽機能と都市景観への圧迫感の緩和を両立する都市緑化を創出した。
2.制約の多い施工条件に対応した大型ユニット化工法
最大幅3.6m×高さ2.4mの大型ユニット(総数180ユニット)をすべて工場で事前製作し、搬入トラックから直接タワークレーンで吊り上げ、外壁パネルと同様の要領で取付けを行った。その結果、2,200枚の壁面緑化パネルの取付けに要する2ヶ月の工程を23日間に短縮し、他の優先工種と重なるタワークレーンの専有期間を大幅に圧縮した。パネル設置に必要不可欠な足場の楊重、設置、解体すべての工程を省くことができた。
ユニット化に際して、点滴式灌水システムの配管も同時に行い、現場施工は給水本管とのアタッチメント接続のみとするなど、総合的な視点での施工の簡略化と工期短縮に取り組んだ。
3.支持構造と一体となったメンテナンス通路と緑化開口部
高所作業車やゴンドラの設置が不可能な高層壁面緑化の維持管理を可能とするため、構造鉄骨と壁面緑化の間に支持構造への作業用床を確保するとともに、市松状の壁面緑化パネルを割り付けることにより開口を設けた。市松状のパネル配置により受風率を低減し、緑化と構造鉄骨への風の影響を最小限に抑える重要な役割を持ち、同時に灌水量の低減も図っている。
4.地上部での事前検証と実証による技術の継承や改善
地上50mでの現場施工において決して不具合を発生させないよう、モックアップを製作し、耐風シミュレーション試験だけではなく、現場と同じ取付条件下で負荷をかける実証実験により安全を確認した。外部足場を組まずに管理用通路側から、緑化ユニットを取り付けるため、二次鉄骨との取付け部材については、耐風、耐震強度と施工性を備えた形状を何度も繰り返し検討、協議し、構造の確認を経て施工に至った。各ユニットへ灌水が行き渡っているかの確認や緑化開口部からの管理作業範囲の確認試験などについても実施し、万全を期した。