第17回 屋上・壁面緑化技術コンクール
第17回 日本経済新聞社賞:屋上緑化部門 (群馬県太田市) | |
太田市美術館・図書館, 株式会社平田晃久建築設計事務所, 株式会社エスエフジー・ランドスケープ アーキテクツ,株式会社プランタゴ, 石川建設株式会社,株式会社山梅, 株式会社イケガミ |
太田市美術館・図書館 |
本作品は、太田駅北口前に建つ美術館、図書館のほか、カフェやショップ、AVホールがある文化交流施設である。この建築は、非常にシンプルな構造をしており、周囲の建物と同じようなスケールをもった5つの鉄筋コンクリート構造の箱と、その周りをぐるぐる回る鉄骨構造のスロープによってできている。 |
■緑化技術の概要
太田市美術館・図書館における技術的な諸元は以下のとおりである。作品面積 | 648.90㎡ | 設計上の荷重条件 実際の荷重 |
1,705kg/㎡ 約1,320kg/㎡ |
階数 | 3階 |
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土壌厚 | 250~2,040㎜ | 土壌の種類と 名称 |
無機質軽量土壌 | 土壌の湿 潤時比重 |
0.69 |
植栽数量 | 高木: 0本 中木: 82本 低木: 713本 地被: 497.18㎡ | ||||
潅水方法 | 無灌水 |
1.狭小な屋上緑化に奥行きをもたせる
屋上緑化は5つに分割されて狭小なため、地下式支柱やパラペットまわりの技術的工夫により、奥行き感のある空間を実現した。屋上の植栽の多くは、パラペット周りに配置し、樹高の高い樹木や常緑樹はキワに配置することで、広がりのある空間を創出している。合理的かつ低コストで人工地盤上の樹木を支持するために、高強度プラスティックネットを抵抗板として使う簡易な地下式支柱を利用した。そして、植栽基盤をパラペット天端高まで充填し、芝生で天端をおさえることで囲繞性の少ない開放感のある屋上緑化を実現した。
2.独立した屋上空間をつなぐ立体的な屋根スラブ
1つの山のように地上から最上部の屋上まで連続的な景観となるよう、屋根スラブに傾斜をつけて、立体的な形状とした。一般的な屋上のように、各階ごとの屋上緑化で構成するとレイヤー状の構成となってしまい、独立した屋上緑化間に連続性が生まれない。そのため、屋根スラブそのものに傾斜をつけることで、屋上緑化間の一体性を高めている。
3.特殊な地域環境に合わせた在来種・郷土種による植栽
周辺緑地に生育する樹種を導入することで、太田の自然環境に合わせた植栽計画とした。在来植生が多く残る金山、雑木林が残されている天神山古墳、屋敷林、工場緑地について植生調査を実施し、周辺地域の在来種および郷土種から樹種を導入することで、地域環境への適性の高い植栽計画とした。このように周辺地域と同様の樹種を入れることで、緑地の少なくなった太田駅周辺に生物の拠り所となる場が生まれ、生態系ネットワークにも寄与している。