本作品は、地域の歴史や文化を象徴する緑豊かな地域に隣接して立地する、オフィス・共同住宅による新設の複合ビルの壁面緑化である。この立地条件を最大限生かし、機能性・安全性・効率性の確保はもとより、競合する事務所の中でも、独自性のある付加価値を合わせ持つオフィス・住宅として構成されている。 「周辺環境との調和と積極的利用」、「独自性のあるワークプレイスの実現」、「環境配慮型の建物性能の確保」を基本テーマに据え、それに沿って視覚的にもわかりやすい形で、外観デザインにみどりを積極的に取り込む手法を検討した。 人は坂道を上るにつれてみどりの基壇を目にしながら建物に近づいていく。高層階の住宅への入り口は左右に立体的な緑の基壇の上に植えられた木立の間をくぐって玄関に入る。また、建物裏手、敷地最低部にまわると巨大なみどりの基壇部の上に建物を仰ぎ見ることになる。石垣とは違う柔らかな生き生きとしたみどりの基壇に親しみを覚え、ほのかに香るテイカカズラの芳香に癒されながら散策を楽しめる都市環境を生み出した。 事前養生植栽パネル(そくめんみどり)と現場施工のパネルを組み合わせ、施工準備を分離し、合理化を考案するとともに、基壇上面部に十分な植栽基盤土壌厚を入れて、高木植栽を可能にする緑化ブロックの強度を確保するなど、早期緑化を可能にする緑化技術が評価された。 |