第16回 屋上・壁面緑化技術コンクール

第16回 環境大臣賞:屋上緑化部門 (東京都千代田区)
東京建物株式会社
大成建設株式会社
内山緑地建設株式会社
大手町の森
東京建物株式会社 大成建設株式会社 内山緑地建設株式会社 大手町の森01 全景
全景
東京建物株式会社 大成建設株式会社 内山緑地建設株式会社 大手町の森02 森の中の歩道
森の中の歩道
東京建物株式会社 大成建設株式会社 内山緑地建設株式会社 大手町の森03 野生を併せ持ち、生態系を豊かにする
野生を併せ持ち、生態系を豊かにする

 本作品は、東京の最も密度の高い市街地の一つである大手町に創出した、高さ200mの超高層建築の足元に広がるほぼ全域が人工地盤上に整備された約3,600㎡の緑地である。
本事業は、都市再生特別地区の認定を受け、従来の広場整備とは一線を画した野生を併せ持った自然の森として整備を行った。
 排熱や強風、日照など過酷な都市環境下において、人工地盤上の限られた土壌で自然の森を永続的に成立させた例はかつてなく、計画・設計から施工の各フェーズで独自の技術を考案した。さらに、これを実証するための「プレフォレスト」という、森の一部を原寸で事前に別の場所で施工する取組を行った。完成したプレフォレストでは、実際に管理を行うことで人工地盤上に造成する自然の森ならではの、維持管理に関するノウハウと知見を獲得した。
 森のモックアップ「プレフォレスト」による様々な工夫、モニタリングを併用した管理フローの見直しと管理者のスキルアップなどにより、都市機能の更新やヒートアイランド現象の緩和、地域生態系の向上と共に、都市に新しいアメニティの提供を実現したことが高く評価された。

■緑化技術の概要
大手町の森における技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 3,658.70㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
2,400㎏/㎡(押えコンクリート含む)
2,300㎏/㎡(押えコンクリート含む)
階数 -
土壌厚 850~1,600㎜ 土壌の種類と
名称
表層:赤土と黒曜石系パーライトの混合土、基層:自然の火山砂利系人工土壌 土壌の湿
潤時比重
1.2
植栽数量 高木: 186本 中・低木: 約590本 地被: 約56,000本
潅水方法 自動潅水システム(スプリンクラー式)、ドリップチューブ併用
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.自然の森の計画技術

 人工地盤上や屋上など限られた空間で野生の高い自然を実現する3つの手法「粗密」、「異齢」、「混交」を自然の森の高木植栽技術として確立した。
 劣悪な都市環境下でも訪れた人が見て楽しみ、かつ健全に育つ自然の森の林床植栽を生育環境分析技術を使ったゾーニングと配植方法にて実現した。
 「イノデ・タブノキ群集」から「ヤブコウジ・スダジイ群集」に移行する樹種構成を基本とし、地被類は景観に配慮しつつ、奥深い里山に生育する植物の中で都市環境に耐えると予測した種を選定した。


2.森のモックアップ「プレフォレスト」による様々な工夫
東京建物株式会社 大成建設株式会社 内山緑地建設株式会社 大手町の森
プレフォレストイメージ図
東京建物株式会社 大成建設株式会社 内山緑地建設株式会社 大手町の森
軽量植生基盤断面図及び、地下支柱の工夫

 自然の森の計画技術を実証するため「プレフォレスト」という取り組みを実施した。本工事の3年前に、設計図通りに人工地盤や植栽を施工した後、異なる工法の工夫や維持管理手法を検証し、最終的に計画地へ移植した。高木は片枝や根鉢偏心など様々な木を組合せながら施工となるため、植栽時の手戻りをなくすよう、樹木データをもとに事前に組合せを決定する手順に改良を行った。


3.PDCA管理サイクル、少量多頻度、モニタリング活用管理

 水切れ予防や倒木防止など人工地盤で特に注意すべき管理を状況に応じて行うために、重点管理項目を盛り込んだ「管理フロー」で優先度を判断しながら作業を行い「日常点検シート」で注意点を申し送るPDCAサイクルを構築した。竣工後に鳥・昆虫・草類のモニタリングを維持管理日とタイミングを合わせて定期的に実施し、専門家の知見を管理者へタイムリーに伝えることで、管理フローの見直しと管理者のスキルアップを図った。