第15回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

第15回 日本経済新聞社賞:壁面・特殊緑化部門 (東京都豊島区南池袋)
豊島区、南池袋二丁目A 地区市街地再開発組合、
一般財団法人首都圏不燃建築公社、
東京建物株式会社、株式会社日本設計、
隈研吾建築都市設計事務所、
株式会社ランドスケープ・プラス、
大成建設株式会社、
西武造園株式会社、旭ビルウォール株式会社
としまエコミューゼタウン (豊島区本庁舎・Brillia Tower 池袋)
豊島区、南池袋二丁目A 地区市街地再開発組合、 一般財団法人首都圏不燃建築公社、 東京建物株式会社、株式会社日本設計、 隈研吾建築都市設計事務所、 株式会社ランドスケープ・プラス、 大成建設株式会社、 西武造園株式会社、旭ビルウォール株式会社 としまエコミューゼタウン (豊島区本庁舎・Brillia Tower 池袋)01 1~10 階の低層部
1~10 階の低層部

 本作品は、2015年3月に完成した複合建築物の壁面緑化である。この建物は、豊島区が掲げる「環境都市づくり」の象徴に位置づけられ、「人と繋がり、街と繋がり、自然と繋がり、歴史と繋がる、都市の循環と発展の中心となる『樹木のような建築』」をコンセプトに計画が進められた。低層階は庁舎と店舗、高層階に住戸を配置し、立体的かつ複合的に緑が組み込まれ、グリーン大通りの並木と呼応し、都市と連動する景観を形成している。
 木の葉のように建物全体に纏い、東西南北すべての外壁面に光や風をコントロールする複合型壁面緑化「エコヴェール」、多様な自然と触れ合える環境の学び場としての垂直庭園「エコミューゼ」、それらを繋ぐ外部階段を覆う壁面緑化「グリーンダクト」が、一体的な環境装置として機能し、建物と街の緑をつなげると当時に、周辺地域の生き物を建物側に誘致するための重要な役割を果たしている。
 区役所本庁舎という公共性の高い建築の緑化とそのデザイン、建物と街をつなげる緑という視点が高く評価された。

■緑化技術の概要
としまエコミューゼタウン (豊島区本庁舎・Brillia Tower 池袋)における技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 5,000㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
エコヴェール:100㎏/㎡に対し、70㎏/㎡
グリーンダクト:70㎏/㎡に対し、50㎏/㎡
階数
土壌厚 エコヴェール:150㎜
グリーンダクト:50㎜
土壌の種類と
名称
固化培土エクセルソイル
/S1 培土
土壌の湿
潤時比重
0.79
植栽数量 高木:112本 中木:88本 低木:5,665株 地被:1,240㎡
潅水方法 点滴式自動灌水システム
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.環境調整機能を担う“木の葉”を模したエコヴェール

 緑化パネルと2種類の太陽光発電パネル、ルーバーパネル、ガラスパネルの5種類で構成された「エコヴェール」は方位や高さ、風特性や内部環境を調査・検討して適材適所に配置した。固化培土に植栽を施した植栽パネルは、東西南北5系統にゾーニングして灌水システムを設置し、各パネルからの排水を合流させて下階のバルコニーにつなげた。この水の流れが植物の葉脈のように、複雑かつ一体のシステムとなっている。緑化パネルの植栽は、四季の移ろいや多様性等の景観面や設置環境を考慮して、下垂つる性植物と低木の合計63種を配植した。


2.多様な微空間を有する多相な緑化ファサード
豊島区、南池袋二丁目A 地区市街地再開発組合、 一般財団法人首都圏不燃建築公社、 東京建物株式会社、株式会社日本設計、 隈研吾建築都市設計事務所、 株式会社ランドスケープ・プラス、 大成建設株式会社、 西武造園株式会社、旭ビルウォール株式会社 としまエコミューゼタウン (豊島区本庁舎・Brillia Tower 池袋)

 「エコヴェール」と外壁の間に、垂直的な緑化装置を組み込んで、垂直庭園「エコミューゼ」を創出した。「エコヴェール」に加え、メッシュ金網カゴにつる性植物と樹木を植栽した「グリーンフェンス」、台地・谷戸・崖線等の変化に富んだ要素を取り入れた「グリーンテラス」、外階段を利用し、建物を流れる川を垂直に繋ぐ役割を果たす「グリーンダクト」。この4層構造となる緑化装置と日照・風環境等の特性を踏まえて選定された全100種類もの植物により、周辺地域の生き物を誘致するだけでなく、来訪者に木漏れ日と通風を提供し、建物の快適性を高めている。


3.人と生物と緑と水をつなぐ「グリーンダクト」
豊島区、南池袋二丁目A 地区市街地再開発組合、 一般財団法人首都圏不燃建築公社、 東京建物株式会社、株式会社日本設計、 隈研吾建築都市設計事務所、 株式会社ランドスケープ・プラス、 大成建設株式会社、 西武造園株式会社、旭ビルウォール株式会社 としまエコミューゼタウン (豊島区本庁舎・Brillia Tower 池袋)
表裏全面を緑化
豊島区、南池袋二丁目A 地区市街地再開発組合、 一般財団法人首都圏不燃建築公社、 東京建物株式会社、株式会社日本設計、 隈研吾建築都市設計事務所、 株式会社ランドスケープ・プラス、 大成建設株式会社、 西武造園株式会社、旭ビルウォール株式会社 としまエコミューゼタウン (豊島区本庁舎・Brillia Tower 池袋)
エコヴェールに内包

 各階の垂直庭園「エコミューゼ」をつなぎ、外階段の壁面を利用した「グリーンダクト」は、緑化機能だけでなく、川を立体的に繋ぐ機能を兼ねている。壁面に組み込まれた縦ドレーン「エコドレーン」により、上階からの水を下階の植栽や水景施設に供給している。表裏両面が壁面緑化である「グリーンダクト」は、各階庭園をつなぐ回廊・環境学習ルートの主要動線となるとともに、生き物や水・緑をつなぐ重要な幹線として位置づけられている。