第15回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール
第15回 環境大臣賞:屋上緑化部門 (東京都豊島区南池袋) | |
豊島区、南池袋二丁目A 地区市街地再開発組合、 一般財団法人首都圏不燃建築公社、 東京建物株式会社、株式会社日本設計、 隈研吾建築都市設計事務所、 株式会社ランドスケープ・プラス、 大成建設株式会社、西武造園株式会社 |
としまエコミューゼタウン (豊島区本庁舎・Brillia Tower 池袋) |
本作品は、豊島区役所内にある10階の「豊島の森」、8・6・4階の「グリーンテラス」、BriiliaTower 池袋の49 階のスカイテラス、1 階南側の人工地盤上のけやき広場により構成された複合建築物の緑化である。豊島区が掲げる「環境都市づくり」の象徴として位置づけられた建築は、都市の循環と発展の中心となる「樹木のような建築」がコンセプトである。木の葉を模した表皮「エコヴェール」、これらの緑がグリーン大通りの並木と呼応し、都市と連動する景観を形成している。 |
■緑化技術の概要
としまエコミューゼタウン (豊島区本庁舎・Brillia Tower 池袋)における技術的な諸元は以下のとおりである。作品面積 | 2,384㎡ | 設計上の荷重条件 実際の荷重 |
1,500㎏/㎡ 平均1,000㎏/㎡ |
階数 | 10,8,6,4F 屋上, 1F 人工地盤上 |
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土壌厚 | 600~1,500㎜ | 土壌の種類と 名称 |
有機系人工土壌 オーガニックソイル |
土壌の湿 潤時比重 |
0.9、1.1 |
植栽数量 | 高木:150本 中木:500本 低木:3,000本 地被:800㎡ ※屋上緑化と人工地盤上部の合計 |
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潅水方法 | 点滴式自動潅水システム |
1.豊島区の地形構造を返還した「エコミューゼ」
豊島区の地形構造は、台地・谷戸・崖線等の変化に富んでおり、この標高差と本庁舎の高低差がほぼ同じであった。そこで、武蔵野台地を表現する「豊島の森」、谷戸~河川地域の「グリーンテラス」、雑木林の「けやき広場」等、各階それぞれに対応させ、かつて、区内を流れていた小河川を自然流下によって再現した。このようにして創出された「エコミューゼ」は、ただ単に昔の風景を再生するだけなく、生き物・緑・水、そして、人(来庁者)を含めたすべての循環を促す環境システムとして機能させることを目指している。
2.河川流域と植生変化に対応した自然環境再現技術
土壌は、自然土由来の人工土壌を採用し、1,500㎜を確保した。水景は、10階の「豊島の森」から、「グリーンダクト」を伝って、各階の「グリーンテラス」を自然流下し、1 階の「けやき広場」から地下ピットに戻り、ろ過・殺菌・温度管理を行った後、再び10階に揚水する。上流域では、区固有の里山の自然を再現するため、雑木類を主に、在来種や野草類を多く導入した。上流域から下流域にかけては、谷戸~河川の流水域、止水域と導入する水生植物種を変化させた。これら導入種や誘致目標種は、事前に実施した環境指標種調査に基づいている。本作品で使用した材料は、豊島区の上流である荒川・利根川水系の流域、氾濫原に近接する地域の植物、水生生物、石材、客土、荒木田土を調達し、トレサビリティを確保している。地歴を継承するため、人工地盤上にケヤキ(樹高12m)を植栽した「けやき広場」を創出した。基盤部全体で均一な水分環境とするため、根系誘導基盤を整備して、根域の健全性を維持している。
3.まち全体に回遊性を生み出す環境学習の拠点づくり
「エコミューゼ」を永続的に活用していくため、教育委員会と共に児童の環境教育プログラムを作成し、自然環境を体験・見学できる学習ルートを設定した。そして、まち全体に向けた新たな回遊性を生み出す環境の拠点となるように、継続的な働きかけを行っている。