第15回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール
第15回 国土交通大臣賞:壁面・特殊緑化部門 (東京都渋谷区千駄ヶ谷) | |
日本生活協同組合連合会、 株式会社日建設計、株式会社フジタ、 トヨタルーフガーデン株式会社、 日本地工株式会社 |
コープ共済プラザ 壁面緑化 |
本作品は、8 階建てのコープ共済プラザの東西ファサード2 面に設置された面積1,800 ㎡の壁面緑化である。各階バルコニーに連続した植栽帯を設け、ワイヤーや鎖樋など外装デザインを構成する複数の登はん支持材に常緑つる性植物を登はんさせた壁面緑化システム「グリーンブラインド」は、上部から葉面灌水を行うことで、気化冷却効果をより高めた環境緑化システムでもある。外装全面に、大規模で先進的な壁面緑化システムを設置し、自然換気とダイレクトナイトパージなど、随所に環境負荷を抑制する環境配慮技術を採用した都心における環境配慮オフィスのプロトタイプである。室内のオフィスワーカーは、日常的に、気化冷却効果だけでなく、居室の日射遮蔽、日射熱取得の軽減を享受していることから、「グリーンブラインド」は知的生産性の向上や癒しにも貢献している。この作品の象徴的な外観は、南西に広がる明治神宮外苑からの夏場の冷風を取り込み、都心のヒートアイランド現象の緩和のみならず、周辺の都市環境改善の寄与にも貢献している。 |
■緑化技術の概要
コープ共済プラザ 壁面緑化における技術的な諸元は以下のとおりである。作品面積 | 約2,500㎡ (緑化約1,800㎡) |
設計上の荷重条件 実際の荷重 |
500㎏/㎡(バルコニー植栽基盤部) 500㎏/㎡(バルコニー植栽基盤部) |
階数 | |
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土壌厚 | 約500㎜ | 土壌の種類と 名称 |
人工軽量土壌 | 土壌の湿 潤時比重 |
0.85 |
植栽数量 | つる植物(H2.0m・H0.5m)8 種 :2,317 本 | ||||
潅水方法 | 自動潅水システム(点滴型) |
1.ファザードと融合し、都市環境に貢献する壁面緑化
恒久的な大規模壁面緑化に適した植栽基盤とするため、建築躯体に逆梁(スラブ)構造を採用し、バルコニーの植栽帯に十分な客土厚を確保した。バルコニー平部には、ハーブ等を植栽し、一体的な緑地空間の形成と植物による癒し効果を通してオフィスワーカーの知的生産性の向上を目指した。バルコニー先端部には、各階ごと上下緊結したワイヤーや鎖樋を約3,700 本配置し、植物の登はん、夏季の強い陽射しの緩和、メンテナンス時の転落防止機能を兼ね備えた力強くも繊細で透過性のある外装を表現した。温熱環境改善効果は、日射遮蔽と同時に、夏季を含む3 シーズンの4 回/日の葉面灌水による蒸発冷却効果の促進と都心のクールスポット「明治神宮外苑」からの冷気の滲み出しを取り込んでいる。
2.モックアップによるつる性植物種特性の実証実験
①つる性植物種の特性把握、②「グリーンブラインド」の各パーツ設置間隔の適正化、③植物特性に応じた適正植物配置、④葉面灌水の方法と効用の検証等を目的にモックアップ製作と実証実験を行った。常緑つる性植物の中でも、「花」と「香り」が楽しめる樹種を中心に、複数の登はん資材との相性や遮光と採光条件のコントロールが可能な8 種を厳選して検証を重ねた。夏季を中心に9ヶ月間実施した結果、①樹種ごとに異なる繁茂特性を示すこと、②植物生長と繁茂特性に応じた混植手法が必要であること、③ワイヤーや鎖樋などの登はん支持材の種類により、各樹種の絡まり方が異なること等の有用な知見が得られた。また、葉面灌水による冷却効果の検証や灌水時風速を測定して、水の飛散状況を把握し、実装段階における灌水時間や周辺の風速状況に応じた自動潅水の最適化の礎とした。
3.恒久的な緑化のための維持管理へのフィードバック
維持管理のポイントである「遮光と採光のバランス」のとれた剪定技術の確立等に向けて、中長期的維持管理方針では、植物繁茂特性に応じた遮光と採光のバランスポイントを取りながら、定期的に関係者による意思統一や管理手法へのフィードバックを行っている。