第15回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

第15回 国土交通大臣賞:屋上緑化部門 (東京都港区虎ノ門)
森ビル株式会社、株式会社日本設計、
株式会社大林組、西武造園株式会社
虎ノ門ヒルズ
森ビル株式会社、株式会社日本設計、 株式会社大林組、西武造園株式会社 虎ノ門ヒルズ01 全 景
全 景
森ビル株式会社、株式会社日本設計、 株式会社大林組、西武造園株式会社 虎ノ門ヒルズ02 オーバル広場(屋上庭園)
オーバル広場(屋上庭園)
森ビル株式会社、株式会社日本設計、 株式会社大林組、西武造園株式会社 虎ノ門ヒルズ03 全体配置図
全体配置図

 本作品は、立体道路制度と市街地再開発事業を活用した人工地盤上に誕生した6,000 ㎡の緑地空間である。地上52 階建て、高さ247m の超高層複合タワーには、日本初進出の革新的ホテル、広いフロアプレートと最高スペックを備えたオフィス、眺望抜群でホテルサービスを利用できるハイクラス住宅、国際水準のカンファレンス施設、多様な都市生活をサポートする商業施設から構成され、東京都が外国企業誘致を推進する「アジアヘッドクォーター特区」の中枢として、国際新都心形成のシンボルとなっている。
 生物多様性に配慮した「自然土」の利用を重視し、小川や豊かな緑を創出した結果、公益財団法人日本生態系協会が運営するJHEP 認証で最高ランクの「AAA」を取得し、周辺エリアへの生態系ネットワークの波及効果を果たしている。また、東京都が定める「東西の環境軸(環状二号線)」と「南北の環境軸」の交点に位置し、「グリーンロードネットワーク」の基点として、都市の生物環境のネットワークにも貢献している。
 戦後まもなくの都市計画から68 年の歳月を経て開通した環状2 号線、「立体道路制度」と市街地再開発事業等の多様な事業制度を活用して緑地空間を創出し、2020 年東京オリンピック・パラリンピックに向けた新たなランドマークとして、緑を通じて、東京の魅力を世界に発信している点が高く評価された。

■緑化技術の概要
虎ノ門ヒルズにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 6,000㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
265~2,560㎏/㎡
265~2,560㎏/㎡
階数 2階以上
土壌厚 300~1,500㎜ 土壌の種類と
名称
自然土・人工軽量土 土壌の湿
潤時比重
1.7(自然土)
0.9(人工軽量土)
植栽数量 高木:293 本 中木:245 本 低木:3,311 株 地被:1,136 ㎡
潅水方法 スプリンクラー設備・自動潅水ホース設備
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.多様な事業制度を活用した、広大なオープンスペースの確保
森ビル株式会社、株式会社日本設計、 株式会社大林組、西武造園株式会社 虎ノ門ヒルズ

 道路の立体的区域を指定し、道路と建物を一体的に整備する立体道路制度は、効率的な幹線道路整備及び適正な周辺土地利用を可能にする。本作品では、市街地再開発事業も活用し、通常の事業で確保できる有効空地6,024㎡を11,680 ㎡に拡大させ、そのおよそ半分の6,000 ㎡をオープンスペースとして確保し、緑の空間として整備した。


2.環状2号線を軸としたグリーンロードネットワークの起点
森ビル株式会社、株式会社日本設計、 株式会社大林組、西武造園株式会社 虎ノ門ヒルズ
森ビル株式会社、株式会社日本設計、 株式会社大林組、西武造園株式会社 虎ノ門ヒルズ

 環状2号線は、海からの風を呼び込み、緑豊かな都市環境を実現する東京都が定める「東西の環境軸」の一つである。その軸に直行するように、皇居、日比谷公園から愛宕山、芝公園につらなる「南北の環境軸」が交差している。その交点に位置する本作品は、「グリーンロードネットワーク」の起点として、周辺エリアへの生態系ネットワークの波及効果を果たしている。


3.生物多様性に最大限の配慮を行った都心のオアシス形成
森ビル株式会社、株式会社日本設計、 株式会社大林組、西武造園株式会社 虎ノ門ヒルズ
森ビル株式会社、株式会社日本設計、 株式会社大林組、西武造園株式会社 虎ノ門ヒルズ

 本作品では、本来の生き物の育みや水分環境の調整装置として、「自然土」と軽量材と組合せ、現代都市が損失した自然ポテンシャルを最大限取り入れた。その結果、「動物評価種のすみやすさ(HSI)」と「みどりの地域らしさ(VEI)」の観点から、生態系や生物多様性の相対的な価値を客観的、定量的に評価、認証する制度「ハビタット評価認証制度(JHEP 認証)」において最高ランクの「AAA」を取得した。このようにして創出されたオープンスペースでは、食と緑、健康をテーマとした多様なイベントが企画され、地域の活性化、タウンマネジメントが実践されている。