第14回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

第14回 日本経済新聞社賞:屋上緑化部門 (東京都江東区)
日本ヒューレット・パッカード株式会社
西武緑化管理株式会社
西武造園株式会社
日本ヒューレット・パッカード株式会社 本社ビルスカイガーデン
日本ヒューレット・パッカード株式会社 西武緑化管理株式会社 西武造園株式会社 日本ヒューレット・パッカード株式会社 本社ビルスカイガーデン01
日本ヒューレット・パッカード株式会社 西武緑化管理株式会社 西武造園株式会社 日本ヒューレット・パッカード株式会社 本社ビルスカイガーデン02
日本ヒューレット・パッカード株式会社 西武緑化管理株式会社 西武造園株式会社 日本ヒューレット・パッカード株式会社 本社ビルスカイガーデン03

本作品は、東京都江東区にある、日本ヒューレット・パッカード本社社屋の屋上に創出された、1,136㎡の屋上庭園である。2011年5月に開所した日本ヒューレット・パッカード本社社屋は、横十間川を挟み緑豊かな都立恩賜猿江公園に近接するとともに、北はスカイツリー、南はレインボーブリッジを上階から望むことができる眺望に恵まれた立地環境である。
本屋上庭園はこの眺望を満喫できる最上階8階の社員食堂と一体化したスカイガーデンとして計画された。同社では、自由な発想を自由な時間・場所で生み出すことを目的とした、自席を持たない「フリーアドレス制」を社員の約75%が採用しており、社員食堂は単に空腹を満たすためだけの場ではなく、飲食をしながら新たなアイデアを生み出す仕事の場、社内コミュニケーションの重要な場として位置づけられている。また、「快適性の高いサスティナブルデザイン」という建築コンセプトと連携し、食堂での提供メニューから空間構成まで一貫したこだわりのもとプロデュースされている。
それらを受け、屋内外デザインの連続性・美観性の演出、食堂への食材提供を目指した五感を刺激する植栽、永続的に安全な食材を提供するための緻密な維持管理等を重要項目と位置づけ、段階的かつ継続的に整備・運営が実施されている。
エディブルプランツを中心とした庭づくりとし、社員食堂への食材提供を目指すという意欲的な試みや、それを実現させるための維持管理の工夫、緑化空間をオフィースワーカーの生産性の向上に活用しようとする試み等が高く評価された。

■緑化技術の概要
日本ヒューレット・パッカード株式会社 本社ビルスカイガーデンにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 1,136 ㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
450kg/㎡
300kg/㎡
階数 8階屋上
土壌厚 平均300mm 土壌の種類と
名称
人工軽量土壌 土壌の湿
潤時比重
0.89Mg/m3
植栽数量 高木:8 本 中木:370 本 低木:65 ㎡ つる性植物:50 本 地被:240 ㎡
潅水方法 自動灌水システム(ドリップホース敷設)、雨水センサー付
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.サスティナブルデザインを踏まえた憩いのテラスと社食への食材提供
日本ヒューレット・パッカード株式会社 西武緑化管理株式会社 西武造園株式会社 日本ヒューレット・パッカード株式会社 本社ビルスカイガーデン
「ランチョンミーティング」風景

建築全体のコンセプトである『快適性の高いサスティナブルデザイン』を踏まえ、できる限り多くの緑化面積を確保するとともに、オフィスワーカーの五感を刺激するハーブ類やエディブルプランツを中心とした植栽となっている。屋内外のレベルの連続性を確保し、屋内ダイニングスペース、デッキ、ガーデンと一体的な空間の広がりが感じられるよう配慮し、限られた屋外空間を緑豊かなガーデンとして演出している。
またガーデンの随所に、樹木の生育植栽基盤厚を確保するために採用したメッシュプランターの果樹(ジューンベリー、ナツミカン、ゲッケイジュ他)や草花コンテナを配置するとともに、「ローズヒップガーデン」「ベリーガーデン(ブルーベリー、イチゴノキ他)」などを整備し、社員食堂への食材提供を目指した植物を導入している。


2.無農薬植物管理の実現に向けた緻密な巡回型グリーンサポート等の導入
日本ヒューレット・パッカード株式会社 西武緑化管理株式会社 西武造園株式会社 日本ヒューレット・パッカード株式会社 本社ビルスカイガーデン
巡回型グリーンサポート

エディブルプランツの社食での活用実現に向け、無農薬による植栽管理に取組んでおり、植物の健全育成を目指し、緻密な維持管理作業を実施している。数年後に確実な収穫や開花が得られることを目指し、果樹やバラ等は小苗で植栽し生育させるなど、植物の生育特性に配慮した中期的管理の計画を作成し実施している。また、従来の剪定・刈込・芝刈り等の集中型グリーンサポートの他、草花やバラの手入れを年間19回、植物の生育期と休眠期で緩急をつけて実施する巡回型グリーンサポートを導入し、高い管理水準を維持している。


3.コンパニオンプランツ等の導入と今後の展望

現在、ローズマリー・ゲッケイジュ・セージ類はボリュームとも十分で、社食での活用が可能となり、ローズヒップティーや木の実のジャム等への活用も計画されている。相互に好影響を与え合うコンパニオンプランツとして、カモミール+タマネギ、チャービル+ニンジン・ラディッシュ等の組み合わせより、エディブルガーデンを充実させ、将来的には社員によるガーデンクラブの形成なども検討している。