第14回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

第14回 環境大臣賞:屋上緑化部門 (東京都世田谷区)
東京農業大学
株式会社久米設計
清水建設株式会社
イビデングリーンテック株式会社
農大アカデミアセンター屋上緑化
東京農業大学 株式会社久米設計 清水建設株式会社 イビデングリーンテック株式会社 農大アカデミアセンター屋上緑化01
東京農業大学 株式会社久米設計 清水建設株式会社 イビデングリーンテック株式会社 農大アカデミアセンター屋上緑化02
東京農業大学 株式会社久米設計 清水建設株式会社 イビデングリーンテック株式会社 農大アカデミアセンター屋上緑化03

本作品は、東京都世田谷区にある、大学の図書館機能と本部機能を併設した9階建ての複合施設の屋上に創出された、約877 ㎡の屋上庭園である。
東京農業大学のある世田谷区は、緑豊かなイメージの高いエリアであるが、受賞作品であるアカデミアセンターも、ケヤキ、クスノキ、メタセコイアなどの巨木で構成された「農大の森」の一角に位置しており、建設に際しては、建築資材に自然素材を用いたり、太陽光や雨水の利用など環境への配慮を図り、「農大の森」と一体になるよう工夫されている。屋上の強い風から庭を守るために設置したスクリーンは透明なものを選定し、視覚的に「農大の森」との一体性を確保するよう配慮している。本屋上庭園は、「農学の基本的フィールド」である里地・里山を構成する農地、二次林、ため池、草原などの要素を取り入れた「林、里、原、畑」のゾーンから構成され、「世田谷の地域性を活かし大学キャンパスの緑との一体化を図る」「里地・里山の景観を表現し環境に配慮した技術を導入する」「学生による植物維持管理の実践の場」の3点をテーマとしている。
「農学の基本的フィールド」である里地・里山を都市のキャンパスに再現したという取組みや、世田谷区の「風景づくり計画」と連携した景観づくり、維持管理を通じた学生の学びの場の創出等といった点が高く評価された。

■緑化技術の概要
農大アカデミアセンター屋上緑化における技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 877.40 ㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
300kg/㎡
300kg/㎡
階数 9階屋上
土壌厚 250 ~ 500mm程度 土壌の種類と
名称
発泡多孔質人工土壌 土壌の湿
潤時比重
0.87
植栽数量 高木:1 本 中木:34 本 低木:2138 株 地被:238.7 ㎡
潅水方法 ドリップ式自動灌水(雨センサー付き)
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.里地里山の景観を表現し、協働で管理する
東京農業大学 株式会社久米設計 清水建設株式会社 イビデングリーンテック株式会社 農大アカデミアセンター屋上緑化
東京農業大学 株式会社久米設計 清水建設株式会社 イビデングリーンテック株式会社 農大アカデミアセンター屋上緑化
里地里山は、「集落を取り巻く農地、ため池、二次林と人工林、草原などで構成される地域」といわれるが、人々が長い時間をかけて手を入れ、またその恵み を享受しつつ持続的な生態系を維持し、様々な生活文化を形成してきた。この世田谷一帯もかつては里地里山の風景が広がり、自然と人が共生する環境が形作ら れてきていた。本屋上緑化において、日本唯一の農学専門大学である大学にふさわしく、里地里山の景観とその仕組みの面影を再現することを目指している。

2.地域性の演出とキャンパスの緑との一体化をめざす
東京農業大学 株式会社久米設計 清水建設株式会社 イビデングリーンテック株式会社 農大アカデミアセンター屋上緑化
屋上庭園と農大の森
本作品は、世田谷区「風景づくり計画」で定められた「馬事公苑のまとまった緑」と「桜丘地区の農地保全重点地区」に隣接しており、計画策定において は、かつての当該地域を代表する「野辺」、「林」、「畑」の景観要素を取り入れ、周辺地域との連携性を高めている。また、本作品は、キャンパスを代表的す る巨木群である「農大の森」に近接している。この緑との視覚的連続性を確保するように、透明な防風スクリーンを導入。飛翔動物の餌事の場や水場の設置など エコアップとエコネットワークにより、「農大の森」との一体化を図っている。

3.コンセプト実現のための緑化技術
東京農業大学 株式会社久米設計 清水建設株式会社 イビデングリーンテック株式会社 農大アカデミアセンター屋上緑化

A.メッシュ金網と不織布を使用した土留め緑化:
  国分寺崖線(ハケ)を表現するために使用。
  土留め緑化にはノシランを植栽。
B.EPS 嵩上げブロックを使用した築山造形:
  崖線や草原を表現するために築山をつくる。
C.野の花マット:
  雑木林の野原を表現するために、武蔵野の四季を彩る花々が
  あらかじめ植えられている「野の花マット」を使用。
D.水鉢:
  ハケの湧水をイメージ。小鳥の水飲み場ともなり、人と自然の
  共生を象徴する。
E.防風スクリーン:
  地上との景観的な一体感を確保し、屋上に吹く強風から里地里山を守る。