本作品は首都高大橋ジャンクションの大橋換気所の7 階屋上に新設された屋上庭園で面積が1,176 ㎡、荷重は592～1,090kg/㎡である。特徴的な緑化技術として①目黒の原風景と生物多様性に配慮した植栽の整備・管理、②循環型社会の形成に向けた水循環システム等の導入、③周囲の歴史的自然環境に配慮した計画をあげている。
本作品では、人と自然が共生していた目黒川周辺の原風景を再生することをめざし、斜面林、草地、湧水とせせらぎ、池、水田を設置している。緑化材料として地域性種苗を活用するとともに、斜面地の倒木防止の地下支柱、土砂流出防止基礎の設置、軽量化のためのEPS の採用等によって斜面林を実現している。換気所屋上に降った雨水は、地下の貯留槽に貯め、浄化した後に水田用水として再利用する水循環システムを採用している。また、水田等において近隣小学校と田植え、自然観察会、稲刈り、脱穀等をテーマとした稲作体験イベントなどを実施して、地域住民との交流を行っている。
循環型社会、都市における「農」、自然再生、生物多様性等に関する考え方、技術力等が凝縮された優れた作品であり、都市における大規模な人工的施設のあり方と計画手法に多くを示唆していることや、モニタリングの実施、稲作イベントのよる交流事業の内容などが高く評価された。