第5回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

第5回 環境大臣賞:壁面・特殊緑化大賞 (東京都世田谷区)
所有・管理:学校法人成徳学園
設計・施工・資材・工法開発:大成建設株式会社
施工・資材・工法開発:東邦レオ株式会社
下北沢成徳高等学校
既存傾斜屋根面を利用した斜面緑化
所有・管理:学校法人成徳学園 設計・施工・資材・工法開発:大成建設株式会社 施工・資材・工法開発:東邦レオ株式会社 下北沢成徳高等学校 既存傾斜屋根面を利用した斜面緑化01

下北沢成徳高等学校の既存傾斜屋根面を利用した斜面緑化施設は、「下北沢の地に根ざした学校づくり」を進めるうえで、「緑化」を重要で効果的な要素として捉え、限られた敷地の中で積極的に緑を確保するため、鉄骨フレームで既存校舎屋根を覆うように緩やかに湾曲する斜面を地面まで構築し、その全面を緑化したものである。隣接する新校舎窓からの景観と教職員や生徒の癒し効果の向上、既存校舎の銅板葺屋根面からの強い照り返し防止等を目的としている。
蒲鉾状で最大斜度は55度を超え、耐荷重が最大で70kg/㎡である傾斜屋根面の緑化技術として、軽量で急勾配面でも崩壊しない緑化工法が必要であり、芝生生育に必要な植栽基盤の確保と土壌流出防止のためのズレ落ち防止技術など設計、施工から維持管理まで多くの工夫がみられる。厳しい条件下において積極的にチャレンジし、新しい工法で斜面緑化を実現しており高く評価された。
高密な既成市街地に「奈良の若草山」を連想させる緩やかな広がりを感じるデザインで貴重なまとまりのある緑を創出しており、地域の景観の向上と環境改善に貢献している。

■緑化技術の概要
下北沢成徳高等学校 既存傾斜屋根面を利用した斜面緑化における技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 1,210㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
70kg/㎡
階数
土壌厚 60mm 土壌の種類と
名称
人工軽量土壌 土壌の湿
潤時比重
0.6~0.8
植栽数量 高木:0本、中木:0本、低木:0株、地被:300㎡
潅水方法 ドリップ式自動潅水システム
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.急傾斜屋根面への緑化技術

緑化が実施された蒲鉾状の傾斜屋根は、施設上部の緩傾斜部と最大で55度ある急傾斜部に分けられ、緩傾斜部への緑化は、植栽基盤支持材の上へ土壌陥没防止ネットを設置し、透水フィルターを設置後に保水性を上げるための植栽用ロックウールマット(t=40mm)を敷設し、人工軽量土壌を設置している。急傾斜部の植栽基盤は、不織布による円筒状の土嚢袋(W=250mm、L=1500mm、t=60mm)に有機含有人工軽量土壌を詰めたものとし、これを地面と鉛直方向に並べている。これにより土壌の流出を防ぐとともに緑化が困難な場所における施工性の向上を実現し、安定した植栽基盤の固定を可能とした。


2.傾斜屋根面緑化の基盤固定技術
所有・管理:学校法人成徳学園 設計・施工・資材・工法開発:大成建設株式会社 施工・資材・工法開発:東邦レオ株式会社 下北沢成徳高等学校 既存傾斜屋根面を利用した斜面緑化

当施設においては既存の傾斜屋根に鉄骨製の曲線フレームを設置し蒲鉾状の傾斜屋根を造っている。このフレームに溶接金網を設置し、その上にポリエチレン製の土壌陥没防止ネット、ポリエステル製の透水シートを敷設した後に植栽基盤を設けることとしているため、緑化施設は空中に浮いた形となっている。また、緩傾斜部、急傾斜部ともに植栽基盤がズレ落ちないよう1,200mm、1,500mmのピッチでステンレス製のズレ防止金具及び芝生用目串等により植栽基盤を固定している。