助成先|平成28年度(2016年度)助成先
事業概要
緑による都市環境の改善に資する調査研究のため支援を希望する者に対し、当該調査研究活動に係る費用を助成しています。本事業は、技術開発基金の運用益をもとに実施しています。
実施状況
平成4年度から開始された本事業は、平成27年度までに計73件の助成を行いました。
平成28年度(2016年度)助成対象者
平成28年度の調査研究活動の助成対象者は、都市緑化機構内に設置した選考委員会によって、応募された調査研究課題の都市緑化技術としての適確性、独自性、内容、方法の適切さ、成果の有効性等について評価がなされ、その結果、以下の5名の方と決定いたしました。
申請者/所属 | 研究テーマ・内容 |
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熊崎 理仁 東京農業大学大学院 博士前期課程2年 |
「レーザ測量データによる庭園の構成要素の3Dモデル化に関する研究」 |
近年、レーザ計測は配管工の維持管理やMMS(モービルマッピングシステム)による道路現況調査、航空レーザ計測による地形データの活用など多岐にわたっている。とりわけ、土木分野ではレーザ計測の利用技術の事例が多く発表されており、有効な活用法がすでに多く存在する。しかし、レーザ計測にて取得された庭園データの使用による庭園空間の詳細な構造の把握は、いまだ成されていない。 よって、3次元点群データに含まれる樹木や庭石などの造園材料の抽出から景観特性に関する解析のプロセスを示すことは、造園分野において庭園の構成特性を視覚的に認識することが可能であり、都市空間での緑化における景観的指標となる基礎データを十分に構築することが可能であると考える。 |
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中島 宏昭 東京農業大学大学院 博士後期課程1年 |
「管理放棄された里山の林床管理の生態的意義と効果」 |
高度経済成長以後、都市近郊の緑地(里山)は量的・質的に大きく変化した。里山での林床管理は林床植物の種数の維持のために効果的である。しかし、生物多様性は種数のみでなく、遺伝的多様性に対する考慮も必要となり、有性繁殖による個体数の維持が重要である。また、里山にレクリエーション機能も要求される昨今、自生植物による開花や結実の増加は、修景効果をあげると共に、地域の魅力づくりにもつながる。そこで本研究では林床管理が林床植物の開花や結実を増加させる要因として可能性の高い、光条件に着目し、林床植物の①純光合成量の変化、②クロロフィル量の変化、③光合成産物の分配について調査することで、繁殖との関係を検証する。 | |
長谷川 順也 首都大学東京大学院 博士前期課程1年 |
「都心部の高層ビル街における植栽を用いた紫外線放射環境の改善効果の実態」 |
近年、日本や海外諸国においてオフィスビルに日射反射性能の高いガラスを用いる建物が増加しているが、屋外に反射した日射により、光害や熱環境の悪化が生じている。ここで熱線を反射するガラスは、紫外線放射の高いものもある。そのため、オフィスビル街では、ビルから照り返したUVの影響が大きいことが考えられる。 そこで、樹木や芝等の緑化に用いる材料はUV吸収率が高いため、街路内において景観や熱環境対策だけでなくUV遮蔽の効果も期待できる。そのことから緑化に着目し、本研究では植栽の形状や種類の異なる場所において紫外放射に対する効果的な遮蔽方法を植栽のない空間と比較を行いながら実測を行うことで明らかにすることを目的とする。 |
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人見 拓哉 千葉大学大学院 博士前期課程2年 |
「都市化が緑地土壌の物質循環に与える影響」 |
一部の自治体では、緑地管理に伴う環境負荷を減少させるために緑地管理に剪定枝を土嬢に還元させる「緑のリサイクル」技術が取られるようになってきている。緑のリサイクル技術を持続的に活用するには剪定枝の分解特性を把握する必要がある。剪定枝の分解には、剪定枝の元素濃度が影響すると予想される。 剪定枝の元素濃度はその植物が生育する土壌の化学的性質の影響を受ける。Takahashi et al(2015)は都市化に伴い土壌の酸が中和されることを明らかにした。土壌の酸の中和は土壌の様々な化学的性質を変化させる。そこで本研究では、都市化に伴う土壌の化学的性質の変化が剪定枝の元素濃度と剪定枝の分解特性に及ぼす影響を明らかにする。 |
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松岡 達也 東京大学大学院 博士課程2年 |
「屋上緑化におけるCAM植物の混植による他種の生育促進効果のメカニズムの解明」 |
屋上緑化に用いられるセダムなどのCAM植物は、乾燥耐性が高い一方で、蒸散による環境改善効果の微小さが問題視されてきた。しかし近年、非潅水下においてCAM植物を混植することで他種の成長を促進することが既往研究より明らかになり、CAM植物の利用価値が見直されている。その促進効果の詳細な機構は解明されていないことから、本研究では生育特性の異なるCAM植物と蜜源植物を混植栽培し、土壌水分環境と生育状況の比較により、促進効果のメカニズムを解明することを目的とする。研究成果は、都市域で様々な生態系サービスを提供するミツバチの蜜源植物の栽培を始め、屋上緑化において潅水頻度の少ない効率的な栽培技術を確立することが期待される。 |
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