第17回 屋上・壁面緑化技術コンクール
第17回 環境大臣賞:屋上緑化部門 (富山県黒部市) | |
YKK不動産株式会社 株式会社プレイスメディア 株式会社エステック計画研究所 株式会社槇総合計画事務所 戸田建設株式会社 株式会社野上緑化 |
パッシブタウン 第1期街区+第2期街区 |
本作品は、環境や自然をありのままに受け入れ活用する「パッシブデザイン」をキーワードに敷地面積36,100㎡を有する自社の社宅跡地において進められた住宅地開発事業である。今回、対象となる街区は、地下駐車場に屋上緑化を施した東側の2街区で、2016年12月までに竣工したものである。 |
■緑化技術の概要
パッシブタウン 第1期街区+第2期街区における技術的な諸元は以下のとおりである。作品面積 | 11,309.00㎡ | 設計上の荷重条件 実際の荷重 |
1,000㎏/㎡ 1,000㎏/㎡ |
階数 | ─ |
---|---|---|---|---|---|
土壌厚 | 300~1,000㎜ | 土壌の種類と 名称 |
多孔質軽量人工度量 ビバソイル |
土壌の湿 潤時比重 |
0.8 |
植栽数量 | 高木: 251本 中木: 65本 低木: 11,987株 地被: 1,280.9㎡ | ||||
潅水方法 | 自動灌水 |
1.各街区を緑豊かなオープンスペースで繋ぐ配置計画
今回対象となる2街区において、東西方向で約1.5mの高低差がある現状地盤の現況を活かして駐車場を半地下部に収め、周囲を掘削残土により盛土擦りつけを行った。これにより、居住者用の車両を敷地内部に侵入させず、安全性が担保されるだけではなく、敷地東側に面する街路からのアクセス性が向上し、街の賑わいを敷地内に引き込むことが容易となった。そして、街区面積の大半を占める地下駐車場の上に、十分な厚さの植栽基盤を持つ屋上緑化を施し、緑豊かなオープンスペースを確保した。そこに、各街区間の回遊性をもたらす保水性舗装による園路、地域の水ネットワークを引き込んだ水路や水景施設、落葉高木を主体とする緑陰空間を設え、居住者や来街者に憩いの場を提供した。
2.2つの異なる建築構造断面による緑化基盤の確保
第1期街区では、十分な深さの植栽基盤を確保するために、躯体の断面構造に逆梁が採用された。これにより、植栽面がフラットな安定したランドフォームを形成し、園路の両脇に落葉樹を主体とする中高木群と足元での季節の彩りを演出する多様な低木地被で構成した落ち着いた緑陰空間に仕上げた。第2期街区では、順梁の躯体断面構造が採用され、緩やかなアンジュレーションのあるマウンドで必要な植栽基盤の土壌を確保した。
3.地域コミュニティの醸成を目指すタウンマネジメント
地域交流の受け皿として、①植栽した植物を記録採取して作成した緑地の整備内容を伝えるリーフレットの配布、②敷地内に植栽した季節の草花を採取して街区内のそれぞれのテナント施設の一角を飾る一輪挿しの提供、③本作品のデザインキーワードを題材にした環境学習型ワークショップを織り交ぜた毎月1回の定期イベントを開催している。これらをランドスケープ設計者と地元造園業者による協働体制で企画運営し、地域コミュニティの醸成を図っている。