第16回 屋上・壁面緑化技術コンクール

第16回 日本経済新聞社賞:壁面・特殊緑化部門 (東京都中央区)
東急不動産株式会社
株式会社日建設計
清水建設株式会社
株式会社石勝エクステリア
東急プラザ銀座 KIRIKO TERRACE / GREEN SIDE
東急不動産株式会社 株式会社日建設計 清水建設株式会社 株式会社石勝エクステリア 東急プラザ銀座 KIRIKO TERRACE / GREEN SIDE01 全景(壁面緑化) (© Koji Fujii / Nacasa&Partners Inc.)
全景(壁面緑化) (© Koji Fujii / Nacasa&Partners Inc.)
東急不動産株式会社 株式会社日建設計 清水建設株式会社 株式会社石勝エクステリア 東急プラザ銀座 KIRIKO TERRACE / GREEN SIDE02 同時に整備した数寄屋橋公園 (© Koji Fujii / Nacasa&Partners Inc.)
同時に整備した数寄屋橋公園 (© Koji Fujii / Nacasa&Partners Inc.)
東急不動産株式会社 株式会社日建設計 清水建設株式会社 株式会社石勝エクステリア 東急プラザ銀座 KIRIKO TERRACE / GREEN SIDE03 立面図(左:北面、中央:東面、右:南面)
立面図(左:北面、中央:東面、右:南面)

 本作品は、銀座の数寄屋橋交差点に面した敷地に建つ延面積約50,000㎡の商業施設の屋上部に設置した壁面緑化である。施設は、「光の器」というコンセプトのもと、日本の伝統工芸である「江戸切子」をモチーフにしたガラスの器としてデザインされている。
 本作品は、水をテーマとしたWATER SIDEとは対照的に、植物という自然物を使用して、来訪者が快適に利用できる空間をつくることを目的に計画され、その主要な構成要素として、屋上空間を取り囲むように配置するとともに、個々の植物が有する色彩や季節の変化といった特徴を活かしたデザインを心掛けている。また、既存の調査結果等も踏まえ、生物多様性の側面も踏まえた植栽選定を行った。
 本商業施設の整備にあたっては、隣接する数寄屋橋公園の整備も同時に行い、事業全体として、往来の多い銀座のまちの中に、様々な来訪者が利用できるパブリックスペースの積極的な創出を図った。
 施設開業1年間に、このみどりがつくる景観を活かしたコンサート等のイベント開催など、来訪者たちに憩いと安らぎを提供している点が評価された。

■緑化技術の概要
東急プラザ銀座 KIRIKO TERRACE / GREEN SIDEにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 360.00㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
70㎏/㎡
70㎏/㎡
階数 -
土壌厚 100㎜ 土壌の種類と
名称
水苔 土壌の湿
潤時比重
0.8t/㎥
植栽数量 高木: --本 中木: --本 低木・地被: 360.00㎡
潅水方法 タイマー制御自動潅水
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.植物が有する特性を活かしたみどりのデザイン
東急不動産株式会社 株式会社日建設計 清水建設株式会社 株式会社石勝エクステリア 東急プラザ銀座 KIRIKO TERRACE / GREEN SIDE
完成した壁面緑化の立面(夏季の風景)

本作品では、モックアップ等を経て選定した約50種類の植物を用いて植栽計画を行った。特に、各植物が有する「色合いの違い」と「季節の違い(開化・紅葉等)」という特徴に着目し、壁面緑化全体として、色彩の多様性と季節の変化を演出する計画とした。また、既存の調査結果より、本計画地が皇居・日比谷公園、旧浜離宮庭園という大規模緑地の間に位置するという立地から、生物の移動ルートとしても期待できることが確認された。そのため、地上約70mの地点でも飛来の可能性のあるチョウ類をターゲットとして、それらの誘致効果のある植物を織り交ぜ、生物多様性への寄与も図った。


2.環境条件の違いを想定したきめ細やかな灌水計画

本作品は、植栽基盤に水苔を使うシステムのパネル型壁面緑化である。そのため、日照、風、温度等の影響による植栽基盤の乾燥や過湿といった状態が起きやすいことが予測された。特に、壁面緑化の立地する方位、高さ等が様々であることから、環境条件が設置場所により大きく異なることが予想され、灌水計画には、これらの環境条件の違いに的確に対応できることが求められた。以上を踏まえ、本作品には予測される環境条件の違いから、5つの灌水系統を配置し、これらの系統を一台のコントローラーで制御できる自動潅水設備を導入した。


3.センサーを利用した環境状況の把握と管理への反映
東急不動産株式会社 株式会社日建設計 清水建設株式会社 株式会社石勝エクステリア 東急プラザ銀座 KIRIKO TERRACE / GREEN SIDE
壁面緑化に設置しているセンサー

現在、壁面緑化には6つのセンターを設置し、湿度(基盤中の水分量)、照度、温度の継続的な計測を行っている。定期的(月1回)にこれら計測したデータの回収・確認を行い、微妙な灌水量の調節を行っている。壁面緑化にとって、その維持に必要不可欠な生命線である灌水は、天候により基盤の湿潤状況が左右されやすい地上70mという立地条件を踏まえ、このようなデータに基づききめ細やかなコントロールを行い、その維持を図っている。また、管理会社内には壁面緑化に特化した調査・検討チームを設置し、植物の生育状況に関する継続的なモニタリングを実施している。