第15回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール
第15回 日本経済新聞社賞:屋上緑化部門 (大阪府大阪市北区) | |
ダイビル株式会社、株式会社日建設計、 株式会社大林組、住友林業緑化株式会社、 株式会社稲治造園工務所 |
新ダイビル 堂島の杜 |
本作品は、屋上緑化の先駆けとして1964年に創出された(旧)新ダイビルの屋上樹苑の樹木の一部を移植継承した緑地空間である。新ダイビル建替計画に合わせ、半世紀にわたり育まれてきた屋上樹苑を調査した後、移植対象木を選定し、根回しと根巻きを行い、養生地に移植した。約4年間の養生期間を経て、2015年3月に、新築された新ダイビルの外構に堂島の杜として計22本の本移植に成功した。 |
■緑化技術の概要
新ダイビル 堂島の杜における技術的な諸元は以下のとおりである。作品面積 | 6,610㎡ | 設計上の荷重条件 実際の荷重 |
1,800~2,700㎏/㎡ 1,000㎏/㎡ |
階数 | 1階 |
---|---|---|---|---|---|
土壌厚 | 150~1,700㎜ | 土壌の種類と 名称 |
自然土 (真砂土+バークたい肥40%混合) |
土壌の湿 潤時比重 |
1.9 |
植栽数量 | 高木:130本 中木:60本 低木:11,500株 地被:330㎡ | ||||
潅水方法 | 自動灌水システム(ドリップ式灌水ホース) |
1.半世紀を経過した屋上緑化の調査実施及び移植技術
大規模屋上緑化の先駆けである(旧)新ダイビル屋上樹苑で立派に育った樹木を移植するに当たり、予備木を含めた25本を移植対象木に選定し、根回し工事と掘取試験施工を行い、屋上で8~11か月にわたって養生した。この屋上樹苑は平均土壌厚36㎝、保水性のシルト性砂壌土であったにもかかわらず、樹木は健全な自然樹形をなしていた。移植に際し、調査木の多くが薄い皿鉢状態で生育していたことから、ストレッチフィルム巻による根鉢補強や単管挟込みによる根鉢補強を行った。屋上からの荷下ろしでは、ビル解体工事と調整し、樹木重量による重機の選定、搬出ルートを十分に検討して、樹木を無事に仮植地に搬出、移植することができた。
2.本植(再移植)に配慮した養生技術
仮移植へ搬出、移植し、本植するための養生期間は、約4年間の長期にわたった。仮植地では、灌水養生の省力化を図るため、盛土形状の高植えとし、液肥が混入できるドリップ式自動潅水装置を設置した。本植前の養生では、高植えした盛土の法尻部(既存地盤周辺)から余裕を持った幅で掘削し、発生根を保持しながら、根が乾燥しないよう、麻布の内側に水でぬらしたミズゴケを差し込んだ。そして、薄い根鉢の変形防止と風による乾燥を防ぐため、鉢の側面全体をストレッチフィルムで巻き込み、鉢土やミズゴケを固定した上で単管を組み、上下から挟込んで根鉢を補強して、本植地に搬出した。
3.人工地盤上であることを感じさせない自然な緑地
22本の移植木は、地下躯体上に防根シート及び貯排水マットを設置し、良質真砂土にバークたい肥40%を混合した基盤に植栽した。樹木の土被り厚を確保しながら、自然なアンジュレーションを巧みに生み出し、地下躯体の存在を全く感じさせない緑量感のある自然な森を創出した。