本作品は、全寮制の中高一貫校の事務管理棟地下・美術教室前にコケを用いて作られた41.68㎡の壁面緑化である。特徴的な緑化技術としては①水分の均一供給・最適分配の機能を備えて生物層を創る環境適応型壁面緑化システム、②コケ植栽による室内外の環境改善効果と植生遷移誘引による生物多様性への配慮、③意匠性の高い室内空間演出と施工機能化・維持管理の省力化をあげている。 本作品では、維持管理と意匠の観点、更に生物多様性に考慮し、9種類のコケを使用している。そして、室内上部から取り入れた光による多様なコケの見え方によって、抽象画のような趣きを室内空間につくりだすことをめざしている。複数のコケは、四季折々に彩りと棲み分けがかわるため、グラデーションの変化が演出され、時期や環境に応じた移り変わりを鑑賞できる生きたグラフィックアートとなっている。壁面緑化基盤には、500×1000mmのパネルを使用し、下地金物に取り付け、そのパネル上にコケの植栽シートを施すことで、施工の簡便化と補植の簡易化を実現している。植栽基盤は、保水セラミックス上に特殊処理をした自然のミズゴケを覆って基盤としている。ミズゴケによる水分を均一に供給する働きを活かし、水分供給を安定させるシステムである。潅水システムは、水分の均一供給と最適分配を有効に行うために循環式の潅水を行っている。 室内空間とコケ緑化によるデザインへの取り組み、補植のしやすさも含めたコケ緑化技術の使用意図が明確に分かる壁面緑化についての技術開発の枠組みと意欲が評価された。 |