第11回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

第11回 日本経済新聞社賞:壁面・特殊緑化部門 (東京都千代田区)
株式会社パソナ農援隊 パソナグループ本部 アーバンファーム
株式会社パソナ農援隊 パソナグループ本部 アーバンファーム01
株式会社パソナ農援隊 パソナグループ本部 アーバンファーム02
株式会社パソナ農援隊 パソナグループ本部 アーバンファーム03

パソナグループ本部 アーバンファームは「自然と共生するオフィス」をテーマとした東京都千代田区にある事務所ビルであり、本作品は壁面緑化1,400㎡と、人工光を用いた野菜畑や花畑など560㎡の室内緑化を行ったものである。
オフィス室内では植物が育つために必要な環境とオフィスとしての快適さや機能性、デザイン性の両面の実現を目指した設備導入を行い常時30品目以上の野菜栽培を4種類の人工光源の使い分けにより実現しており、オフィス内で育つ植物は社員同士のコミュニケーションを活性化させ、健康で気持ちよく働けるオフィス作りに貢献している。
栽培にあたっては常時モニタリングによる温湿度管理を行っているほか自動潅水装置により細やかに潅水量を調整するなど植物生育のための環境を整備しており、室内植栽の維持管理のほとんどは栽培技術を学んだ自社社員が実施している。
壁面緑化はオフィス窓際部分をセットバックすることでバルコニーを設けてプランターを設置し、建物外壁フェンスに植栽が登はん、下垂する仕組みとなっている。バラ、フジ、サルスベリなど200種もの植物が植栽された壁面緑化は、オフィス街の緑のランドマークとなっておりオフィス内側からも庭として楽しまれているほか、温度上昇を防ぐ効果やそれに伴うCO2削減効果が認められて環境省の平成21度クールシティ中枢街区パイロット事業の認定も受けている。
「健康」「エコ(環境)」「農業」という現代的キーワードに果敢に取組み、オフィスビルの新たな可能性を提案した先進的でユニークな緑化が評価された。

■緑化技術の概要
パソナグループ本部 アーバンファームにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 壁面:1,400 ㎡
室内:560 ㎡
設計上の荷重条件
実際の荷重
300~180kg/㎡ (バルコニーのみ該当)
300~180kg/㎡ (バルコニーのみ該当)
階数
土壌厚 400~200mm(バルコニー) 土壌の種類と
名称
培養土
スーパーローム
土壌の湿潤
土壌の湿
潤時比重
培養土:0.9~1.6
スーパーローム:0.6
植栽数量 高木:0 本 中木: 1,230 本 低木:8,800 本 地被:180 ㎡
潅水方法 自動潅水 水耕栽培 人力による潅水
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.人工環境下であるオフィスでの野菜栽培

光については、専門家のアドバイスのもと照度を設定し、全体のデザインや植物との距離も考慮しながら、光源を選択している。主にメタルハライドランプや高圧ナトリウムランプなどの金属ランプ、蛍光灯、LED、HEDL(ハイブリッド電極蛍光管)の4種を栽培用光源として使用している。
栽培方法は土を使うものと水耕栽培とを組み合わせており、土を使った栽培の箇所では、潅水時間や量の設定が可能な自動潅水装置を導入して栽培の省力化を図っている。
また湿度・温度は、栽培箇所で通年、温度と湿度をモニタリングしている。主要箇所にミスト装置を導入し湿度を保持するとともに光源の熱を取り去り生育温度を適正にするために空調の設定温度を調節するなど、環境制御の難しい開放空間において、より植物の生育に適する環境づくりに取り組んでいる。


2.高いデザイン性をもった壁面緑化
株式会社パソナ農援隊 パソナグループ本部 アーバンファーム
■立面図(バルコニー部分)

壁面緑化はオフィス窓際部分をセットバックすることでバルコニーを設けてプランターを設置し、建物外壁フェンスに植栽が登はん、下垂する仕組みとなっている。壁面緑化はバラ、フジ、モモ、サルスベリ等約200種の植物からなり、芽吹き、花、紅葉など四季折々の変化が楽しめる。
オフィス街の緑のランドマークとなっておりオフィス内側からも庭として楽しまれているほか、温度上昇を防ぐ効果やそれに伴うCO2削減効果が認められて環境省の平成21度クールシティ中枢街区パイロット事業の認定も受けている。


3.社員自らが行う維持管理方法
株式会社パソナ農援隊 パソナグループ本部 アーバンファーム
■バルコニー内側からみた壁面緑化

アーバンファームの植栽管理は、難易度の高い高所作業等を除いては、ほぼすべて自社の社員で管理を行っている。水耕栽培の管理や剪定、受粉などのやや専門的な作業については、パソナ農援隊のスタッフが栽培技術を一から学び、対応している。植物工場を始め人工光源での植物栽培に関心を持つ方も多く見学希望者には、社員が設備や技術なども含め説明を加えながら案内するなどの対応を無料で行っている。来客層は一般観光客、農業関係者、学生、その他海外からの来賓など多岐にわたっており、農業や室内緑化、壁面緑化に関する情報発信をすることにもつながっている。