研究年報|研究年報2012

研究年報2012

1. 調査研究・技術開発

(1)共同研究

民間企業や関係団体等と共同して、以下の都市緑化の推進等に関する各種課題についての調査研究を実施しました。

① 特殊空間緑化に関する調査研究

日韓屋上緑化国際セミナーにおいて韓国の屋上・壁面緑化の専門家との交流を図るとともに、ソウル、シンガポールの最新緑化事情の調査を行いました。
また、一般社団法人プレハブ駐車場工業会と「壁面緑化に用いる植物の燃焼試験」の共同研究を行うとともに、「新版知っておきたい 屋上緑化のQ&A」を出版しました。

② 公園緑地における防災技術に関する調査研究

災害時における市民の避難場所となる都市公園について、その認知度や期待する役割などについて三大都市圏の一般市民を対象としたWEBアンケート調査を実施しました。また、岩手県陸前高田市における被災後の状況について、市及びNPO団体等から聞き取り調査を行いました。
さらに防災公園事例集及び防災公園技術ハンドブック施設資料集の改訂に向けた編集作業を行いました。

③ ユニバーサルデザインに関する調査研究

これまでのユニバーサルデザインに関する調査研究成果を踏まえつつ、従来からの研究テーマである「都市公園におけるバリアフリーチェックシート」の改良と情報蓄積を行いました。

④ グランドカバー・ガーデニングに関する調査研究

東京都が推進する校庭芝生化事業を支援するとともに、地域性系統緑化の生産や利用の実態を把握するために実態調査を行いました。さらに、ガーデニング技術を活かした学校緑化の普及を目的とするパンフレット「学校園のススメ」を作成し、学校緑化のあり方の提案や技術的サポート、講習メニューについて検討を進めました。また、校庭芝生化のガイドブック「知っておきたい 校庭芝生化のQ&A」を出版しました。

⑤ 造園新領域に関する調査研究

「造園家が考える緑の墓園」のケーススタディを昨年に引き続き実施し、報告書の作成を進めました。
また、マンション等の集合住宅のみどりを対象とした緑の改善に関する総合的な取り組みを推進するため、マンションのみどりの改善に関するセミナーを開催するとともに、マンションのみどり改善ガイドの作成を進めました。
さらに、平成22年度に作成した公園チェックシートをツールとした公園リニューアルの普及活動を実施するとともに、具体の公園を対象とした
ケーススタディを進め、日本造園学会で発表を行いました。
このほか、植物性発生材の土壌への炭素固定効果について調査研究を進めた。

⑥ 都市環境の保全、育成、創造に関する調査研究

ゴルフ場における生物多様性に関する調査研究では、環境に配慮するゴルフ場の評価制度のあり方の検討を行いました。雨水貯留・活用に関する調査研究では、LID(Low impactdevelopment:低負荷の開発)の考え方を基本とした雨水活用と緑化技術のコラボレーションに関する調査及び実験を実施しました。

⑦ 第29回「全国都市緑化フェアTOKYO」関連講座の開催

6つの共同研究会が連携して、第29回「全国都市緑化フェアTOKYO」の関連講座を以下のとおり開催しました。

テーマ:エコ・グリーンシティをめざして「みどりのある暮らしのススメ」
日 時:平成24年10月17日
場 所:「緑と水」の市民カレッジ2F講習室(日比谷公園内)

(2)受託調査研究

都市緑化に関する調査研究を幅広く進めるため、国、地方公共団体等からの委託を受けて、以下の調査を実施しました。

① 都市緑化による環境の創造、改善に関する調査研究及び技術開発

1)都市緑化等による温室効果ガス吸収源対策等の次期枠組み対応等検討調査
2)平成24年度 深大寺・佐須地域環境資源活用基本計画策定支援業務委託
3)平成24年度 沖縄における生物を活用した循環・共生型の都市緑化等推進検討業務
4)都立公園の防災機能強化・充実のための基礎調査委託(その2)
5)西口周辺レストハウス外有効活用策検討業務

② 都市における新たな緑化空間の創出に関する調査研究及び技術開発

1)屋上緑化・壁面緑化の施工実績及び壁面緑化の実態把握業務

③ 都市における緑化を推進するための植栽植物の育成、管理に関する調査

1)平成24年度 校庭芝生化に関する技術支援業務委託
2)平成24年度 幼稚園・保育所芝生化モデル事業(実証実験)に関するサポート委託
3)平成24年度 幼稚園・保育所等における芝生生育状況調査委託
4)校庭芝生化に関する調査研究委託
5)芝生維持管理モデル事業における維持管理計画策定委託
6)おおさか芝生教室実施事業
7)都立農業高等学校外1校における芝生生育状況調査委託

④ 国・地方公共団体による都市緑化、企業による緑地創出、市民・企業参加の花と緑のまちづくり等の推進に関する調査研究

1)平成24年度日本の造園産業等の海外展開促進のための検討調査業務
2)平成24年度2012年フェンロー国際園芸博覧会における国土交通省出展に関連する業務委託
3)平成24年度浜名湖ガーデンパーク全国都市緑化フェア基本構想策定業務

2. 技術評価

都市緑化技術に関する各種評価を実施し、優良な都市緑化技術等についての普及を図りました。

(1)都市緑化技術審査証明事業

都市緑化技術の審査証明は、民間企業等において開発された新技術の有効性を審査、証明し、国や地方公共団体に情報提供することにより、新技術の活用を促進し、都市の緑化に係わる公共工事の質の向上や効率的な運用等に寄与することを目的としており、その周知広報に努めました。

(2)SEGES

社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)」とは、緑をまもり育てる活動を通じて社会や環境に貢献している企業の緑地を対象に、特に優れた取組みを評価・認定する制度であり、平成24年度においては、以下のとおり認定・審査を行いました。

① 既存緑地版:更新審査3件、維持審査13件
② 都市開発版:新規認定1件

(3)屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

都市のヒートアイランド現象の緩和、省資源・省エネルギーの推進、生物多様性の確保等都市環境の改善に資するため、過密化する都市に残る貴重な未利用空間である建築物等の屋上や壁面、人工地盤や駐車場などの特殊空間における緑化に関する優れた技術、作品を顕彰しました。
平成24年度においては、屋上緑化部門:5点、壁面・特殊緑化部門:6点、計11点について、国土交通大臣賞及び環境大臣賞等の表彰を行いました。

3. 人材育成・情報発信・国際協力等

都市緑化に関する人材育成、情報提供、国際協力の推進を図るため、以下の事業を実施しました。

(1)人材育成

① 調査研究活動への支援

大学院生等の若手研究者による都市緑化に関する調査、研究及び技術開発を奨励するため、優れた研究テーマに対し、技術開発基金による助成を行うことにより、次世代を担う若手研究者の育成を図っており、平成24年度は、3件の調査研究活動に対して支援を行いました。

② 都市緑化技術研修会

都市のみどりに関わる実務者や技術者の能力向上、都市緑化技術に関する情報の提供及び技術の普及等を目的として、下記のとおり都市緑化技術研修会を開催しました。

日 時:平成25年1月17日~18日
会 場:国立オリンピック記念青少年総合センター
テーマ:「震災の経験を活かしたみどりのまちづくり」

③ 造園 CPD プログラムへの登録

造園CPD協議会に参加し、技術者の緑化技術の向上を支援しました。

(2)情報発信

① 機関誌の発行

優れた緑化の取り組み事例や都市緑化技術等に関する最新情報の発信及び調査・研究成果の発表等を内容とする機関紙「都市緑化技術」を発行しており、平成24年度は、

No.85:みどりの経済的効果と企業戦略
No.86:都市緑化フェアの効果と今後の方向性
No.87:協働とみどり
No.88:防災・減災技術とみどり

を発行しました。

② 冊子の発行

市民の都市緑化意識の高揚を図るため、公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会の協力を受け、冊子「生き物共生まちづくりのてびき」を作成、配布しました。

(3)国際協力

① 第5回日韓屋上緑化国際セミナーと韓国・シンガポールの最新特殊緑化事情に関する調査

社団法人韓国人工地盤緑化協会との日韓屋上緑化国際セミナーの開催を核として韓国の屋上・壁面緑化の専門家との交流を図るとともにソウル市庁舎の改修に伴って設置される大規模壁面緑化、東大門歴史文化公園の有機的な屋上緑化をはじめとする韓国の特殊緑化の最新事情を調査しました。また、シンガポールでは、都市の中に計画的に緑地を生み出すCity in the green のコンセプトに基づく、様々な大規模開発における屋上・壁面緑化を活かした付加価値を高めるための緑化計画・緑化事例についての調査を行いました。