みどりの技術プラットフォーム|屋上緑化をすすめるために

緑による建物の魅力アップガイド

国土交通省は、建物のオーナーや都市開発に携わる人達が、緑を活かして豊かな生活を演出する際の一助となるよう、屋上及び壁面緑化の整備のポイントや、集客力を向上させた成功事例などを紹介したガイドブックを作成しました。

都市緑化の一層の推進のために、屋上や壁面の緑化によって、建物の魅力を高め、ビジネスに活かすことに成功した事例や携わった人達の生の声、そこから導き出される成功のポイントを紹介することを目的したガイドブックです。

ガイドブックはこちらからご覧いただけます。

全国屋上緑化・壁面緑化施工実績調査

国土交通省は、平成16年より全国の屋上緑化・壁面緑化の施工実績について、最近の傾向をとらえるために全国の施工企業等にアンケート調査を行ないその結果を発表しています

調査の概要はこちらからご覧いただけます。

都市の砂漠化と屋上緑化の都市気象の改善効果

● 都市の気温

ヒートアイランド現象の進行—人口集中と人間活動の結果

図1  ヒートアイランドとクールアイランドのイメージ

東京の気温の推移をみると、1875 年(明治8)の観測開始以来、最高気温、最低気温ともに上昇傾向にあり、とくに1970 年代以降の最低気温上昇は著しい図2)。

図2東京の気温経年変化
(●最高気温の年平均 ■最低気温の年平均)

写真1 ~3は、7 、8 月の東京、大阪、埼玉県幸手市のランドサット画像である。植物で覆われた部分を濃い緑色で強調している。東京23 区は、ほぼ全域がヒートアイランド化し、わずかに皇居、明治神宮の森などのクールアイランドが点在するにすぎない。人口約5 万人の小都市である幸手市でも中心部の高温化が顕著である。ヒートアイランド化は地方都市でも深刻である。
写真1

ランドサットから見た東京
(1987年7月24日)
写真2
ランドサットから見た大阪
(1987年7月24日)
写真3

ランドサットから見た幸手
(1987年7月24日)

図3 、4 は幸手市での調査であり市街化した区域と周辺の水田地域との温度差は明瞭である。
このように、まとまった緑地は気象緩和効果を発揮するとともに、都市から追い出されてしまった生物類の隠れ家としても機能している。

図3

1989年7月21日14時、
埼玉県幸手市における気温分布(℃)
図4

1989年7月22日4時、
埼玉県幸手市における気温分布(℃)

● 都市の乾燥化

○空気に含まれる水蒸気の絶対量を示す水蒸気圧も、1960 年代から急激に低下している。
○ヒートアイランドはドライアイランドでもある。

東京の相対温度の経年変化
図5 東京の相対湿度の経年変化(1951~1986)気象庁資料より
(●最高気温の年平均■最低気温の年平均)
図6 気温と湿度の関係

注目される屋上緑化の省エネ効果

□ 屋上緑化には、夏は建物の温度上昇を抑え、冬には熱の発散を抑えて、冷暖房に使われるエネルギーを節約する効果がある(図8 )
□ 東京23 区の構造上緑化可能な屋根面積(陸屋根面積)の86 %を緑化した場合、最高気温は0.2 ℃から1.4 ℃低下すると試算されている
□ 金銭換算でも東京23 区の陸屋根面積の50 %を緑化した場合、1 日に1 億円以上の電力料金の節約になる。

 

図7

1994年8月14日の屋上面の湿度日変化
図8

屋上緑化による地表温の変化
住宅:都市整備公団の本社屋上の緑化試験区のデータ
夏期:1994年8月14日 冬季:1995年1月15日

 


建築物の劣化防止、保護効果

●特殊空間緑化を行なうことによりまず“酸性雨や紫外線などによる防水層、壁面などの劣化軽減”効果が得られ、これにより建築物の耐久性の向上が実現する。
●(財)都市緑化技術開発機構が平成6 年に行なった屋上緑化基盤の発掘調査では、18 年たっているにもかかわらず緑化された部分のコンクリートの劣化はほとんど認められず、露出部分とは対照的だった。また、双方の表面を調べたところ、緑化部分のコンクリート面はアルカリ性を保っていたが、露出部分は完全に中性化していた。

写真4 屋上緑化部分の発掘調査(公団K団地 調査:(財)都市緑化技術開発機構)
緑化部分のコンクリート表面
施工当時そのままを思わせる新鮮な表面

露出部分のコンクリート表面
クラックが多く、かなり劣化している。

屋上緑化のエコアップ効果

●生きものの生息空間として屋上緑化はきわめて重要な役割を果たす

  • 屋外の人工地盤、壁面は生物の生息に配慮した緑化をはかることにより、生物の生息基盤となる空間の総量増加に寄与する。
  • これらの空間は、地上部のように人の利用や影響を受けることも少なく、そのため環境を整えることにより生物の生息地として充分機能し、生物ネットワークの形成を補う緑として役立つ。

●セミ、トンボの通行
●屋上での繁殖、営巣鳥の通行
●屋上での鳥の生態

 

図9

緑の水平ネットワーク
写図10

緑の垂直のネットワーク

表1 都心ビル屋上で観察された昆虫類

番号 所在地 調査地 位置(階) 緑地面積(m2 植栽状態(%) 確認種
高木 中木 低木 地被
1 新宿区 市ヶ谷本村長 リンデンビル 10 50 15 40 60 ヤマトシジミ、アヒナガバチ
2 中野区中野 中野ブロードウェイ 10 3120 10 20 30 50 アゲハチョウ、ヤマトシジミ、モンシロチョウ、ウスバキトンボ♀産卵、イチモンジセセリ、オオスカシバ、シオカラトンボ♂縄張り形成、♀♂産卵、アキアカネ、アメトンボ、ヒメアメンボ、コシマゲンゴロウ(成虫、幼虫)、マメコガネ、ルリチュウレンジバチ。
3 豊島区南池袋 西武百貨店パルコ 8 300 20 30 30 10 ヤマトシジミ、アキアカネ、アメンボ、オオスカシバ。
4 新宿区新宿 伊勢丹本館 7 160 30 30 30 40 アメンボ、ヒメアメンボ、セイヨウミツバチ。
5 新宿区百人町 鴨志田ビル 5 80 10 20 50 アゲハチョウ、ルリタテハ、キタテハ、アキアカネ。
6 新宿区住吉町 シンカイビル 4 162 20 70 40 20 アゲハチョウ、モンシロチョウ、ヤマトシジミ、ハナバチsp、アブラゼミ(成虫、幼虫)、ニイニイゼミ、コマダラカミキリ。
7 豊島区東池袋 サンシャインシティ 4 600 40 30 20 10 アオスジアゲハ。
8 新宿区薬王町 鹿島ビル 3 25 20 30 40 40 アシナガバチsp、アキアカネ。
9 新宿区百人町 益田屋正芳園 2 80 5 20 30 ニワハンミョウ、マメコガネ、アゲハチョウ(産卵)。
10 荒川区 東日暮里 荒川区 東日暮里 7 100 60 40 シオカラトンボ(成虫、幼虫)、ウスバキトンボ(成虫、幼虫)、アキアカネ(成虫、幼虫)、アジアイトトンボ(成虫、幼虫)、ノシメトンボ、アゲハチョウ(成虫、幼虫)、クロアゲハ、スジグロチョウ、ヤマトシジミ、ベニシジミ、ヒメアカタテハ、ルリタテハ。

緑と憩いの効果

 人は緑化空間でストレスの解消、騒音感の減少、季節感の創出、 自然と触れあうことによるやすらぎ感の向上などを得ることが期待できる。
●視覚効果
● 植物を見たときのリラックス感の向上
植物を見たときのリラックス感の向上効果が右の図12のように認められる。α波は、心身ともに落ちついた状態で多く認められる。
ここでいうα波総量とは、被験者に設置した12 個の電極が捉えたα波の合計のことである。
図11

植物を見たときのリラックス感の向上
● 植物の視覚疲労回復効果
植物による視覚疲労回復効果が右の図13のように認められる。フリッカー値とは、臨界融合頻度(Critical fusion frequency of flicker :CFF )の略称。点滅する光を見たとき、それが連続光に見えるか、断続光として見えるかの境目の値を周波数(Hz )で表したもの。この値が大きいほど、視覚疲労が小さいとみなせる。
ここでは、フリッカー測定器(竹井式デジタルフリッカー)の測定値をそのまま用いているので、通常のフリッカー値に修正する場合は、目盛りの値を2 分の1 にする。
図12

植物の視覚疲労回復効果

 

●聴覚的効果

□ 緑視率と心理的騒音低減効果

緑視率が増加すると心理的な騒音低減効果量も増加することが認められている(表2 )。
被験者に緑量の異なる数種のスライドを見せながら、主観的な騒音量を聞いた結果から計算したものである。

表2 緑視率と心理的騒音低減効果量
緑視率 心理的騒音低減量
50% 0.1~4.3%
79% 1.7~5.8%
93% 2.8~7.0%
100% 9.7~13.8%

屋上緑化のさまざまな可能性

● 三越本店チェルシーガーデン

平成9 年4 月、日本橋に登場した「チェルシーガーデン」は、 老舗デパートの屋上をカラフルな“英国風庭園”へと変身させた。
1600m 2 のモデル庭園は、ロックガーデン、ウォーターガーデン、 キッチンガーデンなどに分かれ、草花や果樹の苗、パーゴラ、温室、ウッドデッキ、 ハンギングバスケット、ガーデンテーブル&チェアなどを展示・販売。 英国風庭園と聞いて想像できるかぎりの要素が散りばめられている。

三越本店屋上のチェルシーガーデン
園芸資材の展示・販売の場として開設されたが、
デパートを訪れる人の憩いの場となっている。(東京・中央区)

● デリー・エンド・トムスデパートメントの屋上庭園(ケンジントンハイストリート99 ~121 /ロンドン)

この屋上庭園の広さは約7500m 2 もあり、高さは地上30m にも達する。
当時バーカーズ社の副社長であったトレバー・ボウエンの夢を1936 年から1938 年にかけて、造園家ラルフ・ハンコックが現実化した。
屋上庭園の中央にはサン・パビリオン(太陽パビリオン)があり、訪問客はそこで昼食やアフタヌーンティーを楽しんだものである。建物のオーナーが変わっても、サン・パビリオンは独立のレストランあるいはナイトクラブとして経営されてきた。

□屋上庭園に面した建物はレストランとして利用される
□日射しを浴びながら憩うため、テーブルセットも利用されている

□「秘密の花園」を憩わせる堅牢な扉も見られる

□池にはフラミンゴとともに留鳥となったカモの姿がある

□小川も流れるスペイン風庭園

□ 屋上庭園を発想したトレバー・ボウエンの銘板が埋め込まれたレンガ

●事務所ビル

●日比谷花壇本社ビル

(株)日比谷花壇本社ビル(東京・港区)の屋上庭園は、
自社の最新式屋上緑化システムをフルに活用。
庭園は広さ約300m 2 、周囲に2 階建て相当の高いパネルを張り、大型樹木などを植栽した。広い芝生面は、社員へのアンケートで、「パーティーができるスペースを」との要望に応えて実現した。木製のカウンターバーや、夜のライトアップも評判だ。

 

● フジテレビ本社ビル

建物の外部エスカレーターで登り着いた広いエントランス部分を植栽。周囲がまだ荒れた雰囲気のため貴重な緑となっている。レインボーブリッジやテレコムセンターなど、臨海副都心の眺望を楽しめる。

フジテレビ本社のビルのエントランス。
緑を通じての臨海副都心の眺望は、心なごむ。(東京・港区)

 

● ダイビル(大阪)


日本で最も古い部類に入る屋上緑化

● 大同生命ビル(大阪)


ビル内のアトリウム