地球規模での環境という課題が大きくクローズアップされている今日、この問題に都市サイドからも何らかの対応をしていく必要があります。
そのような視点に立ったとき、従来は緑化が困難とされていた人工地盤、屋上、壁面、室内などの、人為的な助けがなくては植物の健全な生育が望めない空間(本書ではこれらを特殊緑化空間と呼んでいます)にみどりを創出するための基礎的技術を確立することは、きわめて有効な手段を得ることになります。 私どもは、厳しい環境条件を有するこれらの特殊空間の緑化を行っていく上で必要となる技術の開発を行い、潤いとアメニティのある都市を創出することを目的として、建設省及び民間企業60社と、特殊緑化技術開発研究を平成3年度から5年度まで実施ししてまいりました。さらに平成6年からは、その研究を特殊緑化共同研究会として継続し、成果の集大成として本書を発行するに至りました。 本書が完成するまでの研究会員諸氏の熱意ある取り組みに感謝を表するとともに、今後、この内容が広く普及して、都市の新たな緑化が推進されていくことを祈念いたします。
主な内容 (1) 本書の目的
本書は、特殊空間緑化の普及・推進を図るために、特殊空間緑化に役立つ代表的な植物について、空間の特性を踏まえた基礎知識を提供することを目的とした手引き書であり、全3冊で構成されている「特殊空間緑化シリーズ」の第3巻として編集されています。
特殊空間緑化についてさらに幅広く知りたい場合は、特殊空間緑化シリーズ・「新・緑空間デザイン 普及マニュアル」を、また特殊空間緑化に関する実際的な技術について詳しく知りたい場合は、特殊空間緑化シリーズ・「新A「新・緑空間デザイン 技術マニュアル」を参照されたい。
(2) 本書の適用範囲
本書は、既設および新設の建築物、土木構造物などに付帯している特殊空間緑化に適用する。
(3) 本書の特徴
本書は、技術者をはじめとする特殊空間緑化に携わる方々が特殊空間で生育できる植物の特徴を手軽に理解できるように、代表的な植物についてやさしく文書と写真を用いて紹介しています。
また、さまざまな分野の技術者の要望にも対応できるように、特殊空間緑化に利用できるより多くの植物の特性データを巻末に掲載しています。
※掲載樹種について
本書では、特殊空間緑化に利用可能な植物についてデータをまとめています。そのうちデータファイル(後述)として、(財)建設物価調査会:『月刊建設物価』に掲載されている植物種をもとに、屋外の人工地盤緑化、屋内緑化、壁面緑化といった三つの植栽対象空間(特殊緑化空間)によく使われる種、あるいは将来有望と思われる種について写真とともに紹介しています。
また、一つの対象空間に限らずよく利用される植物種については、各対象空間ごとに重複して掲載し、それぞれの空間に合わせて性質を紹介していますが、空間ごとの性質が特徴的でない場合は重複を避け割愛してます。
(4)本書の構成
1.本書では次の3つの植栽空間を対象とし、この空間分類をもとにした構成としています。
・屋外の人工地盤
・屋内
・壁面
2.屋外の人工地盤とは
天水がかかり、水平かそれに近い人工地盤上をいいます。具体的には次のような空間です
・ビル・家屋等の屋上
・高架上
・駅前広場等の土木構造物に付帯している屋外の人工地盤
3.屋内とは
建築物、土木構造物等の囲われた空間です。具体的には次のような空間です。
・建物内
・地下空間
・アトリウム空間
4.壁面とは
垂直面かそれに近い立面で、建築物、土木構造物等の外部の壁面をいいます。具体的には次のような空間です。
・ビル、家屋等の壁面・柱面・梁垂直面等
・高架等の壁面・柱面・梁垂直面等
・塀、擁壁等の壁面
植栽空間と植物 屋外の人工地盤、屋内、壁面といった三つの植栽空間別に、植物を選ぶ際に頭に入れておきたい空間の特性を紹介しています。
本書利用の手引き 本書のデータファイル(後述)で紹介している植物の性質などについて、考え方の基準や各種マーク等の説明をしています。
データファイル 三つの植栽空間別に、適する植物あるいは有望な植物について写真や各種データ、特徴を説明するコメントなどで紹介しています。
植物特性分類表 主要な花木、紅葉・黄葉が美しい植物など、植物がもつ各種の特性別に分類した表です。本書のデータファイルで掲載しなかった植物も含めて紹介しています。
植物特性一覧 三つの空間別に、本書のデータファイルで掲載しなかった植物も含めて植物の特性を一覧にしたもので、データファイル以外の植物を植栽する際に参考にして下さい。
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