第17回 屋上・壁面緑化技術コンクール

第17回 国土交通大臣賞:壁面・特殊緑化部門 (山口県山口市)
山口市
新山口駅南北自由通路「垂直庭園」実行委員会
株式会社プランツアソシエイツ
株式会社パーク・コーポレーション
新山口駅“垂直の庭”
山口市 新山口駅南北自由通路「垂直庭園」実行委員会 株式会社プランツアソシエイツ 株式会社パーク・コーポレーション 新山口駅“垂直の庭”01 全景
全景
山口市 新山口駅南北自由通路「垂直庭園」実行委員会 株式会社プランツアソシエイツ 株式会社パーク・コーポレーション 新山口駅“垂直の庭”02
山口市 新山口駅南北自由通路「垂直庭園」実行委員会 株式会社プランツアソシエイツ 株式会社パーク・コーポレーション 新山口駅“垂直の庭”03 植栽デザイン図(上:壁面、下:床面)
植栽デザイン図(上:壁面、下:床面)

 本作品は、山口市によるJR新山口駅周辺のにぎわい創出と山口市・山口県央部の活性化を目指した“新山口駅ターミナルパーク整備事業”により計画された長さ約100m、高さ約5mの壁面緑化である。この壁面緑化の工法は、植物学者兼アーティストのパトリック・ブラン氏が考案した“Vertical Garden”を採用している。山口市徳地と阿東地区、美弥市での植生調査をもとに、地域に自生する植物種を採取し、約135種の在来種を用いて、山口の里山を表現している。本作品の特徴は、壁面緑化を通して、市民に地域の緑に愛着をもたせ、地域の緑の価値を再認識させるため、地域の植生をパトリック・ブラン氏による壁面緑化のアートとして再現し、竣工時から地域住民の積極的な参加を募っていることである。
 駅構内通路部の大規模緑化事例として波及性が強く、在来種活用のための綿密な取り組みと竣工時から地域住民を巻き込んだ活動であること、そして、プロジェクト全体の完成度の高さが高く評価された。

■緑化技術の概要
新山口駅“垂直の庭”における技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 400.00㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
50㎏/㎡
20㎏/㎡
階数
土壌厚 なし 土壌の種類と
名称
特性合成フェルト 土壌の湿
潤時比重
植栽数量 地被: 400.00㎡(約17,000pot)
潅水方法 点滴式自動灌水
(雨水、井水利用のための地下貯水槽設置、電源確保のための太陽光パネル設置)
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.山口の自生種を調査・選定
山口市 新山口駅南北自由通路「垂直庭園」実行委員会 株式会社プランツアソシエイツ 株式会社パーク・コーポレーション 新山口駅“垂直の庭”
自生種調査エリア

パトリック・ブラン氏と山口市、複数の地元業者からなるプロジェクトチームは、この地域で特に自然豊かな「秋吉」と「徳地」の2か所において、多種多様な自生種の調査と選定を行った。この際、自生種を昔から取り扱ってきた地元園芸家が主体となって、約140種の自生種を選定し、パトリック・ブラン氏が植栽デザインを考案した。


2.自生種を地元園芸業者が2年間かけて養生
山口市 新山口駅南北自由通路「垂直庭園」実行委員会 株式会社プランツアソシエイツ 株式会社パーク・コーポレーション 新山口駅“垂直の庭”
養生の様子
山口市 新山口駅南北自由通路「垂直庭園」実行委員会 株式会社プランツアソシエイツ 株式会社パーク・コーポレーション 新山口駅“垂直の庭”

選定した植物はリスト化し、施工まで確実に管理するため、各植物について担当する園芸業者を割り振った。全部で6つの地元園芸業者の温室で、約2年間をかけて、合計約2万ポットまで増やした。


3.地元業者や地元ボランティアによるVertical Garden工法の施工と維持管理
山口市 新山口駅南北自由通路「垂直庭園」実行委員会 株式会社プランツアソシエイツ 株式会社パーク・コーポレーション 新山口駅“垂直の庭”
ボランティアによるメンテナンス作業

複数の地元業者が中心となり、Vertical Garden工法を熟知する現場監督から指導を受けながら施工し、植物は、最終的に約17,000ポットを現場で植え込んだ。作業は、現場リーダーの指示に従い、苗の土を落とすチーム、苗を植え込むチームに分かれた。植え込み完成時には、植物の植え付けをする体験イベントを開催し、通学路としてこの通路を利用する小学3年生92人が参加、地元の植物の魅力を伝えた。施工後の維持管理には、地元のボランティアが定期的にメンテナンス作業に参加し、地元住民の壁面緑化への理解を深めている。