第15回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

第15回 環境大臣賞:壁面・特殊緑化部門 (大阪府大阪市北区)
セイレイ興産株式会社、株式会社日建設計、
株式会社竹中工務店、
株式会社竹中工務店技術研究所、
株式会社朝日興産、
野崎造園土木株式会社
YANMAR FLYING-Y BUILDING
セイレイ興産株式会社、株式会社日建設計、 株式会社竹中工務店、 株式会社竹中工務店技術研究所、 株式会社朝日興産、 野崎造園土木株式会社 YANMAR FLYING-Y BUILDING01 全 景
全 景
セイレイ興産株式会社、株式会社日建設計、 株式会社竹中工務店、 株式会社竹中工務店技術研究所、 株式会社朝日興産、 野崎造園土木株式会社 YANMAR FLYING-Y BUILDING02 立面図
立面図
 

 本作品は、オフィスビルの建築外装材と一体となった幅23.7m、高さ52m の可視性の高い約1,230㎡の壁面緑化である。本作品は、建築外装材に使用されているφ100mm のアルミルーバー材と一体化した「植栽ルーバー」を積層したディテールとなっている。この「植栽ルーバー」は、植栽用の内部構造を備えた筒状のアルミルーバー材に、人工土壌を不織布で包んだ植栽ユニットを挿入した構造となっている。この「植栽ルーバー」を使用した本作品は、室内から外部への透過性と眺望を確保しながら、日射を遮蔽し、室内の快適性と省エネルギーの両立を可能にしている。
 12階屋上庭園の「ビーガーデン」では、ミツバチの巣箱を設置し、2011年3月から始まった「NPO法人梅田ミツバチプロジェクト」の養蜂活動をサポートしている。ビル全体で環境との共生を目指し、本作品をミツバチが集蜜するためのフィールド「緑の大地」と位置づけるため、壁面緑化の4割程度に花の咲く地被植物を植栽している。ミツバチは草花を吸蜜し、12階屋上庭園の「ビーガーデン」では、定期的に集蜜作業が行われている。そして、小学生から一般向けのミツバチの生態学習教室を年数回開催し、ビル全体で環境と共生するコンセプトの具現化を可能にしている。
 ミツバチを活用した都市生態系の創出と都市養蜂に関する取り組み、ビル全体で環境と共生するコンセプトを具現化している点が高く評価された。

■緑化技術の概要
YANMAR FLYING-Y BUILDINGにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 1,233㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重


約50㎏/㎡
階数
土壌厚 100㎜ 土壌の種類と
名称
湿性多孔質人工軽量土 土壌の湿
潤時比重
0.88
植栽数量 低木:11,386本 地被:495㎡(7,644株)
潅水方法 自動潅水システム(点滴型)
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.建築外装材と一体となったアルミルーバー型壁面緑化
セイレイ興産株式会社、株式会社日建設計、 株式会社竹中工務店、 株式会社竹中工務店技術研究所、 株式会社朝日興産、 野崎造園土木株式会社 YANMAR FLYING-Y BUILDING
植栽ユニットのディテール

 本作品で採用したアルミルーバー型壁面緑化は、外装材と一体となった高い意匠性を実現した。この「植栽用アルミルーバー」は、φ100mmのアルミルーバーを扁平させ、W180×H100の植栽用ルーバー材を製作した。植栽用ルーバー材に挿入した「植栽ユニット」は、強風により、植物や土壌が飛散しないように、防草シートで人工軽量土を包み込み、防草シート上部に切れ込みを入れたものである。扁平させたアルミルーバー材に植栽ユニットをセットする方式は、圃場での植物の事前養生を可能とし、根が十分に張った状態の植栽ユニットを本設することを可能にした。植栽ユニット上部には、ドリップ式灌水チューブを設置して、自動潅水とした。施肥作業の省力化を図るため、フロア―毎に設置した灌水基地に、液肥混入器を設置した。


2.モックアップ試験により実現化した実施プロセス
セイレイ興産株式会社、株式会社日建設計、 株式会社竹中工務店、 株式会社竹中工務店技術研究所、 株式会社朝日興産、 野崎造園土木株式会社 YANMAR FLYING-Y BUILDING
地上30mで検証したモックアップ試験

 ルーバー内の土壌温度変化に着目したモックアップ試験では、植栽用アルミルーバーと植栽ユニット間の空気層が、断熱層として有効に機能していることを検証した。地上30mの既存ビル屋上にて、約1 年間かけて実施したモックアップ試験では、「土量による生育の違い」、「飛散防止効果の検証」、「ゲリラ豪雨や積雪に対する安全性」、「ルーバーの支持方法や排水等のディテール検証」、「植物の耐風・耐寒風性・耐暑性を踏まえた適正植物の選定」、「メンテ内容や頻度」を検証した。


3.壁面緑化を緑の大地と見たて、環境との共生を目指す
セイレイ興産株式会社、株式会社日建設計、 株式会社竹中工務店、 株式会社竹中工務店技術研究所、 株式会社朝日興産、 野崎造園土木株式会社 YANMAR FLYING-Y BUILDING
コンセプトダイアグラム

 本作品の4割程度に花の咲く地被植物を採用して、ミツバチが集蜜するフィールド・緑の大地と位置づけた。また、12階の屋上庭園には、ミツバチの巣箱を設置し、養蜂活動の場「ビーガーデン」として、ビル全体で自然環境との共生を目指した。これら都市養蜂に関する取り組みは、小学生等の環境学習の場としても活用されている。