第14回 屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール

第14回 環境大臣賞:壁面・特殊緑化部門 (滋賀県守山市)
セイレイ興産株式会社
株式会社ホロニック
株式会社芦澤竜一建築設計事務所
株式会社ウイン
株式会社ラーゴ
セトレマリーナびわ湖/ヤンマーマリーナホテル
セイレイ興産株式会社 株式会社ホロニック 株式会社芦澤竜一建築設計事務所 株式会社ウイン 株式会社ラーゴ セトレマリーナびわ湖/ヤンマーマリーナホテル01
セイレイ興産株式会社 株式会社ホロニック 株式会社芦澤竜一建築設計事務所 株式会社ウイン 株式会社ラーゴ セトレマリーナびわ湖/ヤンマーマリーナホテル02
セイレイ興産株式会社 株式会社ホロニック 株式会社芦澤竜一建築設計事務所 株式会社ウイン 株式会社ラーゴ セトレマリーナびわ湖/ヤンマーマリーナホテル03

本作品は、滋賀県守山市、琵琶湖湖畔にあるホテル、約9,653 ㎡の緑化空間である。かつて、琵琶湖にはいつくもの内湖があり豊かな生態系を育んできたが、現在ではそのほとんどが姿を消してしまった。本作品では、敷地西側の湖際に「内湖」となる雨水を利用したビオトープを創出し、建物を間に敷地東側には里山育成林を配し、水辺から里山へとエコトーンのグラデーションの形成を目指している。このエコトーンのグラデーションを分断しないよう、中間領域に配置した建築物については、その形状や配置、仕上げの素材に至るまで、様々な工夫が凝らされている。建築の周囲に伸びる段状の折板スラブの上部を全て緑化しすることで、周辺の自然の植生が連続して宿っていくプラットホームとなることを意図している。建築物の仕上には、地域で採取できる自然の素材や日本の伝統的な工法を用いるなどし、地域の自然環境や風土との親和性を高めるよう試みている。
また建築の竣工後から、ホテルの運営者が主体となって、外来種植物の除去などエコトーンを再生するための様々なプログラムを実施している。これには、設計者、ホテル宿泊客、学生などが参加し運営されている。
一旦消失したエコトーンをホテル建設に際し再生するというコンセプトと共に、地域生態系にとけ込む建築の工夫、ホテル運営者が地域と一体となって環境再生に取組む活動等、地域環境やまちづくりに貢献する事業のスタイルが、緑化技術と相まって高く評価された。

■緑化技術の概要
セトレマリーナびわ湖/ヤンマーマリーナホテルにおける技術的な諸元は以下のとおりである。
作品面積 9653.3 ㎡ 設計上の荷重条件
実際の荷重
一般部 450kg/㎡ ,庇部分400kg/㎡
415kg/㎡
階数
土壌厚 100~400mm(屋上緑化) 土壌の種類と
名称
ホートクソイルA 60%,針葉樹皮粉砕品 40%、パーライト 10% 土壌の湿
潤時比重
0.8
植栽数量 高木:17 本 中木:本 低木:50 本 地被:8304 ㎡
潅水方法 ドリップ式チューブ
ここで導入された技術のうち特徴的なものとして以下の点があげられる。
1.エコトーンの再生
セイレイ興産株式会社 株式会社ホロニック 株式会社芦澤竜一建築設計事務所 株式会社ウイン 株式会社ラーゴ セトレマリーナびわ湖/ヤンマーマリーナホテル
外来種駆除の様子

敷地内の琵琶湖際のコンクリートを可能な限りめくり、既存の捨石護岸部に葦やマコモの苗をルートボール工法で植え、水際環境を再生しようと考えた。また敷地西側の湖際にふたつの小さな雨水池を計画し、地域特有の生態が宿るビオトープ環境を計画している。敷地東側は、結婚式の記念植樹などで少しずつ植樹していく里山育成林や道路の喧騒から敷地を守る鎮守の森となっている。建築が、エコトーンの一部となるよう、屋上面は地域の生態が宿るように全面緑化し、西側の水辺環境と東側の里山環境を結びつけている。また建築の竣工後から、ホテルの運営者が主体となって、外来種植物の除去などエコトーンを再生するための様々なプログラムを設計者、ホテル宿泊客、学生などによって実施している。


2.屋上緑化
セイレイ興産株式会社 株式会社ホロニック 株式会社芦澤竜一建築設計事務所 株式会社ウイン 株式会社ラーゴ セトレマリーナびわ湖/ヤンマーマリーナホテル
背後の比良山脈の山並み模した屋上緑化

上部にいくほどセットバックしている折板状のRCスラブのホテル棟屋上は全て緑化している。土の飛散を防止するために芝生によって一旦ターフィングした屋上面は、つくり込まず、種子が飛来し、周囲の植生が連続して宿るようにと計画している。屋上の土壌は、滋賀県産の針葉樹の樹皮を混入した軽量土壌とした。


3.内湖の再現
セイレイ興産株式会社 株式会社ホロニック 株式会社芦澤竜一建築設計事務所 株式会社ウイン 株式会社ラーゴ セトレマリーナびわ湖/ヤンマーマリーナホテル
雨水を利用した内湖の様子

琵琶湖周辺には昔より琵琶湖と街を繋げる水域である多くの内湖が存在し、人と自然の接点をつくってきたが、その多くが消失し、現在では23 カ所が残るのみである。そこで今回ホテル西側に、この内湖的存在をつくろうと考え、建築の屋上緑化面に降り注ぐ雨水が流れ込むため池(内湖)を2か所計画した。内湖には、マコモや葦などの植物を植樹し、地域固有のビオトープを形成している。湿地内の水域の水深の多様化を目的とし、土壌の盛り方と様々な粒径の自然石配置のエコスタックを形成し、多くの動植物の生育に配慮した。